「発酵TMR」は現在一般に普及している通常のTMR(未発酵、フレッシュ)とは異なり、水分のあるTMRを密封貯蔵させたものです。その結果、乳酸・アルコール発酵し、発酵前とは、栄養成分、牛への嗜好性、ルーメン発酵、体内での消化・吸収、乳生産、乳成分への影響も異なってきます。
この「発酵TMR」の発祥は私の知る限り、日本で1990年代に普及してきた「オールインサイレージ」ではと捉えています。
「オールインサイレージ」は水分の高い食品副産物(粕類)や自給飼料にフスマ、大豆粕、とうもろこし等の濃厚飼料を加え、乳牛や肉牛のTMRと類似の栄養成分にして給与していました。
水分の高い粕類や自給飼料はそのまま密封貯蔵すれば、アンモニアが高い変敗したサイレージになるため、水分調整材としてビートパルプや濃厚飼料を加え、乳酸・アルコール発酵させる方式が「オールインサイレージ」です。牛の嗜好性もよく、当時の試験結果でも乾物摂取量や飼料効率のアップが示されていました。
「発酵TMR」と称させるものは、TMRとして給与できるよう、配合内容を牛のルーメン発酵にとって適正にし、牛に必要な栄養成分や物理性をすべて満たしている完全な給与飼料ということになります。
しかし、現在、国内で一部普及している、この「発酵TMR」は海外では現在でもほとんど顧みられておりません。その原因はその調製・製造費が通常のTMRに比較し、一般に割高になるためと思われます。またTMRの発酵による飼料的な付加価値も顧みられておりません。
しかし、国内では過去「オールインサイレージ」が生まれ、その後多くの研究機関が「発酵TMR」に関する試験、研究を実施してきました。さらに現在も「発酵TMR」を製造しているTMRセンターかあります。条件によっては事業として成り立っていけることを証明しています。
今後、このブログでは、TMRを発酵させることで成分的にどんな変化がおこり、またどんな飼料的、栄養的付加価値が生まれ、その付加価値が通常のTMR製造よりアップする製造費等のコストを上回る可能性があることを示していきたいと思います。
牛は、微生物を自分の胃に住まわせ、消化管を一部大きくし(ルーメンとなる)、その微生物たちにルーメン発酵という自らは消化できない繊維成分をエネルギーに変えさせ、また良質な蛋白に変換させるシステムを獲得し、進化してきました。このルーメン発酵を利用して栄養を獲得している牛に、発酵したTMRを給与したらどうなるかを迫っていきたいと思います。