乳牛の国内統計を見る限り、経産牛の空胎日数は年々長くなっています。
その原因の一つに発情行動が弱く、発情が見つけにくい状況にあるためです。
そのため、人工知能を組み込んだ発情発見装置も普及してきました。繫ぎ飼いの場合、フリーストール等の放し飼いに比較し、本装置による発見率は落ちる傾向があります。
この中で、繫ぎ飼い牛群における、従来の陰部の変化、粘液の漏出等の観察の他、農家さんではあまり実施されていない、膣の中を市販のファイバースコープを使って観察して、発情かどうかを確認する方法を紹介します。
なぜ、このような方法を紹介しようと思ったかは、発情行動の有無に関わらず、排卵した牛の排卵前(発情時)の牛の膣や子宮は形態的に同じような状態にあるという研究報告を目にしたからです。膣鏡のように膣部から子宮外口の状態の観察を強化すれば、今より発情は見つけやすくなるのではと考えたからです。
- 膣鏡と違い、ファイバースコープによる確認は、牛の抵抗も少なく、ほとんど一人で実施できます。
- 一例としてファイバースコープによる膣内の観察は、シダー等の挿入器の内側にファイバースコープ(スマホを使って画像を見る機種)を固定します。
- 冒頭の画面のように、発情行動が強い時の子宮外口の特徴を覚えていれば、発情時の状態かは、理解できるようになります。黄体期の子宮外口を見慣れておけば、その違いははっきりしてきます。当然、発情兆候は本方法だけで判定するだけでなく、陰部や粘液の状態も加味していきます。
- 牛の場合、発情後2~3日で排血を目にすることが多くあります。これは子宮の収縮が強いためであり、排卵した可能性は十分あります。しかし、排血量が少量であったり、牛床での確認であるため、見つけられないことが多くあります。その点、本装置を使えば、排血の有無はより確実になります。排血を確認すれば、次回発情予定の確認も力がはいるのではないでしょうか。
- 農家さんは子宮内膜炎の発見は、白濁した粘液等で確認すると思います。本装置を使えば、上記の排血と同様、少量でも確認でき、白濁粘液の有無をこれまでよりはっきりすることができます。
冒頭の写真は、発情行動を示した時の未経産牛の子宮外口を映したものです。子宮外口は充血し、弛緩し、粘液の漏出も見られます。
(参考研究報告)
「分娩後の高泌乳牛における発情行動と膣粘液を用いた発情発見の再考」(Res.Bull.Obihiro Univ 37:1~14(2016))
「乳牛の発情兆候と授精適期に関する研究」(学位論文、住吉俊亮)