1980年代は牛の飼料となる食品副産物の代表であるビール粕、豆腐粕は水分が80%近くの生での飼料として流通していた時代であり、夏季では傷みも早く、品質に問題が出る場合がありました。しかし、現在では脱水技術や乳酸菌、酵素(セルラーゼ等)を使い乳酸発酵させ、長期保存が可能になっています。そのため、毎日生で発酵TMRの原料に組み入れる必要がなくなりました。またサイレージ化しているため通常のTMR(フレッシュTMR)の原料としても使いやすくなっています。
以下に水分のある食品副産物をフレッシュTMR、発酵TMRの原料にした場合の製造面、品質面等での違いを示しました。
フレッシュTMR | 発酵TMR | |
センターの稼働 | TMRの保存がむずかしく、連日稼働が通常 | 配合飼料工場等同様、休日等の稼働停止が可能 |
調製・製造費 | 密封のための機械措置不必要 | 密封のための内袋使用、保管場所の諸費用負担が出る |
保存性 | 通常、製造後数日以内の給与が必要 | 長期保存が可能(酸・アルコールの生成) |
嗜好性 | 二次発酵する可能性があり、その場合嗜好性低下 | 牛はアルコール発酵を好む傾向にあるか |
上記のとおり、生産費の面では通常のTMR(フレッシュTMR)は発酵TMRより優位性が高いことがわかります。
現在、府県ではTMRセンターの生産が月間500~2,000トン程度の規模が主体であり、トランスバックでの運搬、利用が多く、それに比較し発酵TMRはポリ袋等による密封貯蔵が必要です。この生産費が上乗せさせられます。また1ヶ月程度貯蔵する保管場所も確保しなければならない場合があります。しかし、今後機械化、自動化が進み、貯蔵、運搬利用がラップマシーンの製造方式が主体になれば、また貯蔵場所を利用者の敷地等にすることが許されるなら、この面での経費が変わってくる可能性があります。
一方生産費には出てきませんが、保存性や嗜好性はフレッシュTMRより発酵TMRに優位性が高い場合が多いと言えます。
総じて、一般にこの発酵TMRが普及するには、この生産費を超える飼料価値を生み出すことが必要になってきます。
次回は、フレッシュTMRを密封貯蔵して発酵TMRにした場合の栄養成分、品質の違いについて整理していきたいと思います。