飼料と同様、化学肥料も値上げ基調にある中、少しでも糞尿を堆肥化し、土壌の腐植化を高めると供に肥料成分として有効利用したいところです。
私が堆肥発酵の研究に携わった中で一般に見逃されている点を整理し、上述したことに少しでも役立てばと思います。
1) 夏場とそれ以外では、どちらが堆肥の分解量(消失量)が高い?
一般に夏は堆肥の温度が上がりやすく、堆肥の分解量が高いと判断すると思います。
しかし、当方が調査した事例は違っていました。同じ堆積期間において、発酵前の有機物量に対して夏場のその消失量が冬場に比較し約9%ほど低かったのです。
なぜでしょうか?
この理由は、夏場は気温が高く、水分の蒸散が多く、堆肥温度も高くなります。
そのため、堆肥中の微生物の増殖旺盛な期間が水分低下(乾燥化)のため冬場より短く、その結果分解量も少なくなったと考えられます。
この事例のように、堆肥発酵が進んでいるかは、水分の低下や堆肥温度だけでは決められないことになります。正確には堆肥中の有機物の消失量を推定する必要があります。堆肥の有機物消失量を農家さんにでもできる定量的方法は後日のブログで紹介します。
2) 同じ重量の堆肥原料(例えば100㎏の原料)において、堆肥の水分80%を70%にする(A)のと、堆肥の水分70%を50%にする(B)のではどちらの水分消失量が多い?(ただし、AもBも発酵後の有機物の消失量は同じ10㎏とします)
正解はAです。
ぜひ、それぞれの水分消失量を求めて、高水分の堆肥を火力乾燥等で水分を10%下げるための水分の蒸散量の多さ、あるいは敷料等を使って水分を10%下げるための敷料等の多さを数字で掴んでいただければと思います。
3) 堆肥の水分を堆肥発酵によって80%から50%にする(C)のと、牧草の水分80%を圃場で乾燥して50%(D)にするのでは水分の消失量(蒸散量)は同じ? (堆肥も牧草も100㎏)
正解は「違う」です。Cの蒸散量が多くなります。
単純に同じと考えるかもしれませんが、堆肥の場合は発酵熱により水分が蒸散しますが、有機物も炭酸ガスやアンモニア等になりその消失も大きいものがあります。堆肥原料の有機物の消失量が10%(10㎏)の場合、堆肥の水分を50%にするには、70㎏の水分を消失(蒸散)させる必要があります。それに対して牧草を乾燥して50%にするには水分の消失量(蒸散量)は60㎏になります。
尚、2)、3)の正解を出すには、中学校で習った比例式等を使えば出すことができます。
冒頭の写真は高温の堆肥によくみられる放線菌です。
次回は、堆肥の分解量の測定を含めて、堆肥の分解とその肥料成分の話を中心にします。