牛の飼料、サイレージで見逃されている点(12)「ルーメン発酵におけるサイレージ中のアミノ酸の効果は?」

前回のブログの続きですが、牧草、飼料作物等のサイレージ化による増加する多種類のアミノ酸は尿素等のアンモニア態窒素よりルーメン微生物の増殖を高くすることは下記の研究報告を見れば、納得いただけると思います。
一般の酪農家さんにおいても、刈り取り時期が同じ牧草サイレージでも乳酸発酵したサイレージと刺激臭の強い酪酸発酵では、牛の乾物摂取量や乳生産、受胎への影響が異なるのではと感じている方は多いと思います。
実際、米国の飼料計算ソフト(AMTS等)には、このアミノ態窒素の要求量を示しています。

総じて府県は北海道に比較し、乳牛の飼養において、使用している乳酸、アルコール発酵した粗飼料の給与割合は低く、さらに濃厚飼料も配合飼料を給与している場合は、アミノ態窒素が十分ではないかもしれません。

一般に、同一の栄養組成の原料草でも乳酸含量が高い牧草サイレージと酪酸含量が高いサイレージでは、貯蔵時の乾物ロスが違い、さらに給与時の乾物消化率、糖含量も違っています。
しかし、もう一つ見逃してならないのは、牛のルーメンにおける窒素源の違いです。
給与される窒素源がアンモニア態窒素なのか、アミノ態窒素なのかが、牛の乾物摂取量、乳生産を大きく左右させる要因の一つと考えています。

その中で、サイレージ中のアミノ態窒素を増やす方法として、牧草、飼料作物のサイレージ調製時、蛋白分解酵素を添加すれば、アミノ態窒素が増加することをサイレージ研究に携わっていた時に実際、確認しています。

私も今後、農家さんの協力が得られれば、試験的なサイレージ調製ということで、実際、牧草等のサイレージ調製時、蛋白分解酵素を添加し、アミノ態窒素リッチなサイレージを作り、乳牛に給与して、食い込みが上がり、乳生産に影響するかどうか見たいところです。
尚、冒頭の図は、下記の研究報告1)の中から転載させてもらいました。

さらに、下記の研究報告2)では、コーンサイレージ調製時蛋白分解酵素を添加し、インビトロではあるが、澱粉の消化率が有意に増加したとしており、推察するに子実中の澱粉粒子を覆う蛋白物質のプロラミンが酵素分解され、澱粉の粒子が消化しやすい状態になったのかもしれません。

(参考研究報告)                                                                       1)「ルーメン細菌の増殖に対するアミノ酸の効果」(農研機構HPより)                                               2)‟Effect of exogenous protease enzymes on the fermentation and nutritive value of corn
silage” (J.Dairy Sci.,95(11):2012)   

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。