前回は堆肥発酵における主にその有機物の分解や水分消失の数量的捉え方について触れました。今回は堆肥発酵における有機物の分解組成や堆肥の肥料成分の消失について整理したいと思います。
1)堆肥の有機物の消失量(発酵前の堆肥材料中の有機物含量を100%とした場合)の求め方は?
堆肥の有機物の消失量(率)は、発酵前の粗灰分と発酵後の粗灰分を測定することで分かります。
式は以下のとおりです。
堆肥有機物消失量(%)=(AD-AR)×104/AD×(100-AR)
(AR:発酵前の乾物中粗灰分率 AD:発酵後の乾物中粗灰分率)
この式を成り立たせている前提は粗灰分は発酵前と後においても重量は変わらないという事実によります。
それでは、粗灰分はどのようにして測ればいいのでしょうか。
飼料、土壌分析等をしている検査機関に依頼するか、または幾分誤差が多くなりますが、自分でガスコンロ、ステンレス製の灰皿などを使い、堆肥の有機物を燃焼し、残ったものを粗灰分として測定します。自分で実施したい方は下記のWEBページを参照下さい。
もし牛糞堆肥の発酵後の粗灰分が30%程度なっている場合、発酵前の堆肥材料の粗灰分は通常は15%程度ですから、有機物の消失量は上記の式により求めてみると、発酵前の有機物含量の60%程の大きなものになっております。
粗灰分が30%程度までになれば、堆肥中の微生物が利用できるエネルギーは少なく、「完熟堆肥」の範疇に入るのではと捉えます。
2) 牛糞堆肥をどの程度、発酵させればいいのでしょう?
発酵していない生堆肥(糞尿の未分解)の圃場への散布による作物の影響については他の著書等にお譲りして、堆肥の発酵度合いと肥料成分との関係を整理したいと思います。
上記の作物に障害が起きない程度の発酵になった場合、それ以降は作物の生長に影響する即効性の窒素成分はどんどんなくなり、土壌の腐植に寄与する「土壌改良資材」の一面が強くなります。また、放線菌等の菌体が多くなれば、その堆肥を圃場に散布すれば、土壌病害などを起こしにくい土壌になる可能性は十分あります。
また、発酵途中の堆肥を圃場に散布しても、作物を播種するまでの期間が長くなるほど、土壌中の微生物により、堆肥の即効性の窒素は使われていき、やはり「腐植効果」としての一因になってきます。
是非、未熟、中熟、完熟等の牛糞堆肥における、肥料成分、腐植効果、土壌病害防止を理解し、「土作り」に力を入れていただければと思います。
冒頭の堆肥写真では、表面より数センチ掘ると白灰色の層が見られましたが、この層に堆肥の繊維を分解する放線菌が密集しています。これが出ていると堆肥の温度も上がっており発酵は進んでいます。
(参考WEB)