これまでのブログで述べてきた「堆肥発酵」は主に好気性つまり、堆肥中の微生物が酸素を使って堆肥の分解を進めていることが前提です。
一方、昔から堆肥発酵において、「嫌気性発酵」を促すという触れ込みの資材が市販されています。
また、堆肥の学術的研究報告から堆肥発酵中には、好気性菌と共存して嫌気的にクロストリジウム菌(酪酸菌)やバチルス菌の一部が生育、増殖して有機物の分解に関与していることも一般に知られています。堆肥の水分が高く、切り返しもしなければ、嫌気性発酵が強くなっていることは十分考えられます。
堆肥の分解が進むということは、その中の菌の増殖が盛んということであり、そのためにはエネルギー源が必要です。しかし、牛の糞尿と木質系の調整材ではその大部分を占める繊維がエネルギー源として使われなければ、有機物の分解は十分進まないことになります。
また嫌気性発酵は好気性発酵に比較し、一般に知られる限り、酸素の利用がないため、熱発生量は低く、堆肥の水分蒸散は低くなります。
ただ、糖含量の低い牧草などの高水分のサイレージ材料を密封貯蔵した場合、クロストリジウム菌(酪酸菌)が増殖し、有機物の分解量が高くなり、品温も通常より高くなっていることがあります。
そのため堆肥の切り替えし等による酸素供給が十分でなくも繊維の分解能力の高い嫌気性の細菌の増殖が高まれば、有機物分解は進み、また嫌気性の細菌の増殖によって生成された酪酸等の有機酸はその時発生したアンモニアと反応し、アンモニアガスの揮散は少なくなる可能性があります。
これはあくまで私の仮説的説明ですが、繊維を分解する能力の高い嫌気性菌等を堆肥材料に添加し、無添加と比較し、前報のブログで紹介した方法により有機物の消失量の違いや品温の違いを確認すれば、その仮説に説得力が増してくるでしょう。
そのため現在、ある堆肥センターで「嫌気性発酵」の促進をうたい文句している資材の添加の有無による堆肥発酵の違いを調査中です。
ルーメン環境における嫌気性微生物による繊維の分解は旺盛であり熱の発生もあります。
堆肥環境においても好気性微生物と共存できる嫌気性微生物の働きに着目する研究がさらに進むことを願う次第です。
冒頭の写真は文中に記した堆肥発酵促進資材を添加した堆肥の山(右側)と無添加の堆肥の山(左側)を示しています。