牛の代謝、栄養、飼料等のトピックス(13)「稲ワラの澱粉含量は?」

稲ワラは肥育和牛等の粗飼料源としては、カロテン、硝酸態窒素、カリウムが低い等、乾牧草と違った飼料特性があり、国内での利用は高いものがあります。     
一方、ホル泌乳牛用の飼料としては、繊維の消化性が低いため、粗飼料源としては一般的ではありません。しかし、昔から使われている食用稲のワラと異なり、飼料専用に品種改良された飼料稲の稲ワラの澱粉含量は、食用の稲とは、大きく差があるようです。下記に示した研究報告での分析事例では、食用品種の「コシヒカリ」の乾物当たり澱粉含量が8.5%に対して「夢あおば」、「リーフスター」がそれぞれ17.9%、17.6%と食用との澱粉含量の差は大きいものがあります。このような澱粉含量が高い品種の稲ワラを3㎏程やれば、約0.5㎏の澱粉を摂取したことになります。                                                                                         稲ワラでも泌乳牛がよく食べるものは、糖・澱粉含量が高いのかもしれません。

過去のブログでも述べたように、稲WCS(ホールクロップサイレージ)は他の牧草・飼料作物と異なり、灰分(その4~7割は珪酸)がそれらより3~5割程多く、その分乾物のエネルギー価は低くなります。しかし灰分を除いた有機物の可消化エネルギーは、多くのイネ科牧草と大差はなく、TDNは60%以上になります。茎葉タイプの飼料専用品種では、NFCも25%以上の場合が多く、コーンサイレージのような濃厚飼料的要素の部分も高くなります。

他方、食用向けの稲WCSの中で、刈取りステージ等の関係でサイレージ調製時の水分含量が70%以下にならず、糖含量も少ない品種において、酪酸(アンモニア)発酵が気になる場合には、牧草と同様、添加剤(稲の場合には澱粉分解酵素、乳酸菌の併用)の利用により、不良発酵は回避ができます。

また、飼料専用品種の稲ワラにおいては、前述したとおり茎葉の澱粉含量が高いため、生稲ワラをサイレージ調製して、乳酸含量が少ない不良発酵が多い場合は、前述の添加剤の利用により対処できます。
円安が続き、輸入粗飼料の高騰が続けば、飼料専用品種の稲の需要は今後も高まるのではと思っています。

(参考研究報告)
・「稲わら中の澱粉の特性解明と糖化プロセス最適化に関する研究」(学位論文(東京大学):松木順子)

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。