発酵初乳の給与は?

本ブログはサイレージを一区切りして、養牛の哺育・育成に必要な代用乳(粉ミルク)、人工乳(スターター)等の飼料に関して見逃されている点について触れていきたいと思います。

第一回目は初乳に関してです。子牛の将来の発育にとって初乳がどれほど重要かはすでに養牛農家さんであれば承知のことです。

数種の代用乳の性能を比較する試験等において、特に生後始めての初乳給与時間や給与量が不明な導入初生子牛を使う場合には、免疫グロブリン量の指標となるγグロブリン量等を測定し、問題ないことを確かめてから比較試験をする必要があります。
初乳を飲ませる時が遅かった場合や飲む量が少ない場合の影響は比較試験で飲ませる各代用乳の性能の影響より、はるかに大きな影響を与えてしまうことを代用乳の開発に関わったものが実感として感ずるからです。
この初乳は生後すぐに飲ませて血中抗体を上げるだけでなく、その後に与えても腸管内の局所免疫の強化につなげることができます。
さらに生乳よりビタミン類、抗菌性物質、成長因子等も多く、脂肪の消化性も一般の代用乳より高いのです。しかも、分娩後5日までの初乳は出荷できない生乳です。
この5日間の初乳を無駄にせず、できるだけ有効に飲ませ、その後に飲ませる代用乳の給与期間を短くすることが、飼料費の節約とその後の子牛の発育に有効と考えます。

それでは、5日間搾って余剰となった初乳はどのように給与すればいいのでしょう?

ここで発酵初乳を給与する一つの方式を示します。

ここで発酵初乳の成分量を試算したいと思います。(試算は論文「牛初乳の乳組成の経時的変化について」(石井、2014年))に基づき行いました)
概ね固形分13.3%、乾物換算で蛋白質33% 脂肪27% 灰分 9.6%と一般の代用乳より蛋白、脂肪含量が高いものであり、1日4~5リットルの摂取でも発育に必要な量となります。
尚、発酵初乳とする初乳については白血病等のウイルスや細菌等の汚染の危険性の対応としてパスチャライザーするなど初乳給与と同様の処置が必要です(加温処理する場合、その後の乳酸発酵のスターターとして乳酸菌が生きている市販のヨーグルト等の添加を薦めます)。

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。