過去のブログにおいて、発酵TMRの主に飼料特性について触れました。今回はTMRの発酵によりどのくらい酵母や乳酸菌の量が含まれているか知りたく、整理してみました。
その理由の一つに酵母は「イーストカルチャー」等として市販されており、また乳酸菌も子牛用の整腸剤等として販売されているものがあります。発酵TMRにもこのような酵母・乳酸菌製剤のようなルーメン・腸内発酵に影響を及ぼし、通常の栄養成分とは異なる生理的機能を期待するからです。
今回参考にしたのが下記1)、2)に示した公的機関等が調査した結果です。これを基に整理、試算してみました。
次に発酵TMR中に含まれる乳酸菌の乳酸菌製剤的な機能ですが、下記の2)の報告結果では、発酵TMR原物1g中には乳酸菌生菌数は10の11乗に及ぶ場合もあり(冒頭の図)、死菌を含めれば、この程度の菌数は通常の発酵TMRに含まれていることは十分考えられます。
この量は前述の発酵TMR中に含まれる酵母の乾燥重量とほぼ同じになります。泌乳牛への乳酸菌製剤の添加量も多くても50g程度であり、やはり量的には少ない乳酸菌摂取量ではありません。
乾燥酵母において107程度の菌数は、重量では1㎎程度です。発酵TMR原物1g当たりにも同程度の生菌が含まれている時があり、死菌も含めれば、それ以上の可能性もあります。
農家さんが泌乳牛に給与している発酵TMRは水分によりますが、水分40%程度では30㎏以上は給与されています。そうすると、酵母菌体は1mg×30,000ということになり、計算上は30g程度摂取していることになります。
市販の酵母製剤の給与量はおおむね10g~50gであり、量的には充分な量の給与になります。 酵母にはビタミンB群が多く、また酵母製剤の投与によりカビ毒の軽減の可能性もあります。
泌乳牛に発酵TMRを給与して、糞の刺激臭が少なくなる等、腸内発酵に影響を及ぼしていることを感じることがあります。これも乳酸菌や酵母が含まれていることが一因かもしれません。
(参考研究報告)
1)「乾燥酵母の生細胞数測定法」:関税中央分析所 第2号(2003年)
2)「発酵TMRは貯蔵中に大腸菌群・糸状菌を検出限界以下にできる」
https://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/seika/kanto22/03/22_03_18.html