牛糞尿堆肥中にはその原料、成分の由来から、牛の腸内で増殖した菌体蛋白、飼料由来の不消化蛋白・腸壁細胞の脱落物等が含まれています。そのため堆肥発酵中には、遊離アミノ酸やペプチドが生成されていきます。
その遊離アミノ酸は堆肥中の菌の細胞内に取り込まれ、菌体蛋白、あるいはエネルギー源になり、発酵が進むにつれその含有量は減少します。
発酵過程で遊離アミノ酸含有量が髙い段階で、それを施肥すれば「アミノ酸肥料」としての効果が表れる可能性があります。
1980年代すでに作物の根からの栄養吸収に於いてアンモニアとしてではなく、直接アミノ酸として吸収される研究報告が出ていたことを記憶しています。改めて調べてみると、現在、ペプチドやアミノ酸等の有機態窒素として吸収させる理論的根拠に基づき、有機農家さん等で施肥管理が実施されるまでになっています。
サイレージ発酵と同様、嫌気的な堆肥中の糖含量が髙ければ、発酵過程で生成された遊離アミノ酸は堆肥中の細菌によりエネルギーとして消費されてアンモニアが発生するその量は少ない可能性があります。
高温が維持されれば、放線菌等により繊維が優先的にエネルギー源として利用させる可能性もあります。
飼料中の窒素源は、ルーメン発酵においてみられるアミノ酸、ペプチド等の溶解性蛋白分画や非分解性蛋白分画等の含量を近赤外線装置等で測定できます。
堆肥中のアミノ酸、ペプチド等の溶解性蛋白含量も近い将来、飼料と同様に一般に分析される時代が来ると思われます。
ここまで整理すると、木質系の水分調整材の多い牛糞尿堆肥原料については、通気等を多くし放線菌やバチルス菌を増殖させ土壌病害に強い堆肥の製造、もう一方は、木質系に比較し通性嫌気性細菌のエネルギー源の多い稲ワラ、麦ワラ、食品残さ等の堆肥原料は、アミノ酸含量を意識的に高める発酵として、窒素肥料効果が高い製造に分かれる可能性があります。
何れの発酵にせよ、できるだけアンモニアとして空気中に窒素源を放出してしまうことは避けたいところです。
冒頭の分子式はアミノ酸の一つであるアラニンです。これらのアミノ酸は堆肥中の細菌等によりエネルギーとして利用された場合、左のアミノ基(-NH2)はアンモニアに、右の炭素、水素、酸素の結合部分は水と炭酸ガスに変化することになります。