ホルスタイン泌乳牛が種々の障害で繁殖を諦め、搾乳しながら肥育する「搾乳肥育」を実施し販売する場合、乾草やサイレージ等の粗飼料割合を減らし、濃厚飼料の割合は7割以上を給与することを薦めていました。
しかし、これにより、「ルーメンアシドーシス」の症状を呈することなど、一般にはありません。また、搾乳肥育の試験報告は過去数多くなされていますが、前述のような高泌乳牛以上の濃厚飼料が高い割合で実施されています。
その一方、高泌乳牛では6割程度の濃厚飼料でもルーメンアシドーシスの研究報告、事例はみられます。
これらの事例等からも、単純に粗飼料の割合だけではルーメンアシドーシスの発生は決まらないようです。
ルーメンアシドーシスにおいて、ルーメンpHの値が示される研究報告が多くあります。ルーメンpHにおいて5台が続けば、それに適さない細菌は死滅しエンドトキシンが発生し、牛の代謝に大きな影響を及ぼすことは承知のことです。
一方、肉牛肥育の研究報告などを見ても、稲ワラ等の粗飼料が3割以下でもルーメンpHは6台の範囲です。
以上きちっとした根拠ではありませんが、粗飼料割合の要因だけでなく、他の要因も「ルーメンアシドーシス」の原因を考えてしまいます。
過去、泌乳牛のルーメン内にpHセンターを入れTMR給与時のルーメンpHを測定する中、急に濃厚飼料を1~2㎏添加した時にこれまでの変化にはないpHの低下が大きかったことが印象に残っています。
あるいは、多くの泌乳牛の給与試験に携わりましたが、給与試験開始時、飼料メニューを変える時に大きく乾物摂取量が低下する場合がありました。
このような経験から飼料給与の急変がルーメン菌叢に影響を与え、ルーメン発酵の安定性が崩れ、中にはpHが大きく低下することもあるのではと推測します。
農家さんが給与飼料のエネルギー価が低いことを指摘された場合、トウモロコシ等の濃厚飼料を増給することになります。その際、それが適正な栄養バランスとしても、ルーメンpHは大きく変動する可能性があり、やはり濃厚飼料の増給は慎重に行う必要があります。