緑茶粕には、タンニンが多く含まれています。タンニンは飼料中の蛋白質や体内の消化酵素等の蛋白質に結合し、その消化・吸収を妨げる働きをします。
実際、国内でも泌乳牛への給与試験が実施されており、それが窺える結果が出ています1)2)。
また、嗜好性が悪く、単独給与では採食させるのが難しいでしょう。
一方、TMR等の飼料原料として混合し、和牛繁殖牛に給与した事例3)では、乾物1.2kgほど与えても、通常の飼料メニューに比較し、受胎や血液性状等の生理的機能に影響を与えていません。
私の今のところの見解としては、本飼料の飼料化の研究に従事した際の給与試験等2)から、泌乳牛においては、乾物0.5kg以内であれば、乾物摂取量、乳成分、乳生産に影響せず、粗飼料としては高蛋白であるルーサン乾草等の代替に使えるのではと判断しています。
茶葉が原料となっている食品副産物(以下「茶粕」)には、緑茶粕の他、ウーロン茶粕、紅茶粕等があります。
これらも同様にタンニン含量が高く、給与量に留意する必要があります。
現状では、茶葉を原料とした副産物は、一般には普及していないようです。
しかし、輸入粗飼料価格が高止まりしている状況下、前述の本飼料のタンニンの蛋白質凝集作用を低減できる調製ができれば、給与量を増やすことも可能かもしれません。
一般に茶粕は、抗菌性が高く、糖含量が低く、水分も70%以上と高いため、単に密封貯蔵しただけでは乳酸発酵は低い傾向にあります。
しかし、これに乳酸菌と繊維分解酵素を併用すれば、乳酸発酵が強くなることが知られています4)。
また、エステル型のタンニンについては、タンナーゼという酵素が市販されており、これを添加すれば、加水分解され、遊離のタンニンが多くなります。
遊離のタンニンは、エステル型に比較し、蛋白の凝集作用は弱いことが知られています。
しかし、実際に茶粕にタンナーゼを添加した「茶粕サイレージ」を乳牛等に給与した研究報告は見当たりませんでした。
タンニンも植物に多く含まれるポリフェノール類の一つであり、これまでの過去のブログで述べてきたとおり、ポリフェノールは血中のコレステロール値を低下させる等、牛の代謝に大きな影響を与える可能性があり、この点についても十分留意する必要があります。
冒頭の写真は、ユーカリの木に登っているコアラです。
コアラはタンニンの多いユーカリの葉を主食としているのは、腸内にタンナーゼを出す細菌がおり、ユーカリの葉の消化・吸収を手助けしているためです。
(参考研究報告)
1)「泌乳牛への茶飲料製造残さ給与が乳生産性と栄養代謝に及ぼす影響」(兵庫県農林水産技術総合センター研究報告:第47号16-22 2011)
2)「緑茶粕の澱粉分解酵素活性阻害」(「畜産の研究」第64巻11号(2010年))
3)「黒毛和種繁殖雌牛における緑茶粕調整サイレージの給与効果」(令和6年度島根県獣医学会産業動物部門)
4)「乳酸菌及びアクレモニウムセルラーゼ添加緑茶飼料残渣サイレージの化学組成と栄養価」(日畜会報74(3):355-361, 2003)