酒粕は食品用途として利用されることが多く、飼料用途としてはあまり出回っていないと思われがちです。 しかし、大手メーカーなどによる清酒の製造方法は、地酒などの伝統的な製法とは違っており、その結果、酒粕の成分も異なります。一般に「液化仕込み粕」と呼ばれるこの酒粕は、風味などの品質面から食品用としてはあまり流通していないようです。
清酒は、米・米麹・水を仕込み、清酒酵母で発酵させた「もろみ」をろ過して得られます。その残渣が酒粕です。
一般的な酒粕は殺菌処理され、食品用途として市販・流通しますが、前述の「液化仕込み粕」は殺菌されず、そのまま飼料用として流通していることが多いようです。
一方で、県などの公的機関では、この「液化仕込み粕」を牛に給与する試験が行われており、飼料としての価値が示されています¹)。
この「液化仕込み粕」は、市販されている牛用の酵母生菌剤や「イーストカルチャー」と同様に、牛のルーメンや代謝に影響を与える可能性があります。
さらに、市販の酵母添加剤と比べて、基材が米麹や米であるため、麹菌が生成する多種の消化酵素が失活せず多く含まれています。また、麹菌や酵母菌が生成するビタミンB群、アミノ酸、オリゴ糖、さらには各種の抗酸化成分や抗炎症性成分も含有されています。
私が特に注目しているのは、酒酵母が特有に多く生成する S-アデノシルメチオニン(SAM)です。
メチル基を軸とした代謝、いわゆる「メチレーション回路」は生命活動において極めて重要であり、SAMが不足すると、さまざまな肝機能障害をはじめとする問題が発生します。
実際に、人ではSAMを投与することで脂肪肝予防への効果が期待されており²)、牛に給与した場合にも同様の効果が期待されます。
例えば、酒粕を周産期前後の乳牛に1日5kg程度給与することで、SAMを約5g摂取することが可能です。薬理量には達しないものの、メチル基供給源としては非常に魅力的な含有量といえるでしょう。
(参考文献)
1)「酒粕の給与が乳牛の乳生産,第一胃液性状,血液成分及び養分消化率に及ぼす影響」(兵庫県立農林水産技術総合センタ
ー研究報告 3:1–7,2020)
2)”Clinical trial of heptral in patients with chronic diffuse liver disease with intrahepatic cholestasis
syndrome”(Klin Med (Mosk):1998;76(10):45–48.)

