過去のブログにおいて乳牛における「オスモライト」を紹介しました。その中の一つである「トレハロース」に関しては、乳牛の暑熱ストレス等による酸化ストレスへの影響の研究報告がみられるようになりました1)。
不思議なのは、「トレハロース」はショ糖と同様、2糖類であり、またルーメンや小腸で消失や分解するのに、なぜか血液を介する乳腺組織等を含めた全身の組織、細胞に酸化ストレスの低減の効果がみられる研究結果が出ています2)。
私の栄養的知識では整理できない、分子レベルの代謝の世界があることが窺える物質です。
トレハロースは、ブドウ糖と同様、生物のエネルギーでもあります。牛においては、ルーメンで消失しますが、牛にはその代謝産物の形でVFAと同様、間接的にエネルギーの一部として働くことになります。
しかも、前述のように牛の酸化ストレスの効果を示しており、私の中で付加価値の高い飼料として捉えています。
本品は農家さんでも、ネットで購入できるものであり、価格もkg当たり400円程度です。
給与量は成牛においては1頭1日50g程度でよい場合もあり、ビタミン剤等の添加剤と比較して割高ではありません。
過去、私自身が乳牛の「オスモライト」の研究に携さわったこともあり、前述の研究報告を参考に農家さんに協力いただき、酸化ストレスが原因になる疾病等の予防として試験的に使用してもらっています。農家さんがその効果を実感すれば、段々、付加価値の高い飼料として認知されるのでは思っています。
「トレハロース」の種々の研究報告は、その製造元であり(株)林原のHP内の「トレハロースシンポジウム」3)等に掲載されています。
(参考研究報告)
1)「トレハロースの飼料添加が暑熱環境下の泌乳牛の酸化ストレス指標に及ぼす影響」
:「日本獣医師学会雑誌」(2019 年 72 巻 3 号 p. 147-153)
2)「乳牛における血乳症の発生要因と対策に関する調査」:「家畜診療」67巻1号(2020年)令和元年度家畜診療等技術東北地区発表会抄録
3)https://www.hayashibara.co.jp/list/symposium/