一般に市販されているキノコは、シイタケを除き、多くが冒頭の写真のようにポットで栽培されます。食用部分である子実体はカットされ、ポット内に残るキノコ菌糸体を含む廃菌床は、肥料や牛用飼料として利用されています¹)。
この廃菌床は、栽培するキノコの種類や栽培方式により異なりますが、乾物全体の約2割を占めると見込まれています。キノコ培地の主原料がオガクズではなくコーンコブの場合、乾物あたりのエネルギー価(TDN)は50%前後とされることが多いです。培地の原料自体が飼料として利用可能なものであることから、主に牛用の飼料として活用されています。
私が注目しているのは、廃培地に含まれる菌糸体です。菌糸体には、過去のブログでも取り上げたトレハロースのほか、マニトールなどの糖アルコールやβ-グルカン、ビタミンDなどの成分が含まれています²)。また、これらの機能性成分が豊富に含まれているためか、ブナシメジの抽出物には脂肪肝予防に効果がある成分が含まれているとする研究報告もあります³)。
キノコ菌床粕は消化率が低いため、牛のエネルギー源としての価値は高くはありません。しかし、前述の機能性成分が多く含まれていることや繊維含量が高いことから、和牛の繁殖・育成用飼料や乳牛の乾乳期用飼料として適していると考えられます。
キノコ菌床粕を乾物として1kg程度給与すれば、牛は約200gの菌糸体を摂取することになります。エリンギやブナシメジの廃菌床であれば、約30g以上のトレハロースを摂取することとなり、牛に対して抗酸化作用(血乳予防など)や免疫強化が期待できそうです。
なお、冒頭の写真はポット栽培されたブナシメジです。
(参考文献)
1)『飼料特性を理解して上手に設計に活かす』 デーリィ・ジャパン社、pp.303–310
2)「きのこ類の生活習慣病改善効果」『農林水産省研究ジャーナル』第25巻第10号、2002年
3)「担子菌類由来物質による生活習慣病予防に関する研究」『林業研究所 研究報告』第16号、2004年3月