「カカオ殻」は、カカオ豆を精選し、チョコレート、ココア飲料等のような食品原料にする際に出てくる副産物です。
飼料標準成分表にも出てくる飼料原料です。繊維の消化率が低く、TDN(乾物当たり)は、44.1%と飼料価値は低いものになっています。
カカオ殻には、アルカロイドの一つである「テオブロミン」という物質が含まれ、泌乳牛に給与した場合、乳脂率がアップすることを確認しています。
これに関しては、ある飼料メーカーも過去特許出願(「乳質改善のための乳牛用飼料」特許拒絶)しています。
テオブロミンの薬理作用等を知りたい方は「ウィキペディア」等を参照いただくとして、なぜテオブロミンを摂取させると泌乳牛の乳脂率が上昇するのか、整理してみます。
テオブロミンを摂取すると牛においても、人と同様、体脂肪の動員による血中遊離脂肪酸量が増加し、「基礎代謝量」が増加します。 そのため、牛の分娩後の体脂肪動員が乳脂肪の一部になるようなことがテオブロミン摂取によっても起こります。
牛の飼料メニューの組み入れは、前述の生理作用から、分娩後の食欲が順調であることを確認したうえで実施します。
具体的な飼料メニューの組み込みは、濃厚飼料の一部0.5㎏~1㎏程度を濃厚飼料と置き換えます。
受胎が遅れ、過肥が気になる牛は泌乳後半から乾乳前期にかけて、牛のダイエット飼料として利用するのも適しています。
カカオ殻には、カフェインも含有しますが、前述の基準量ではその毒性は問題になりません。
カカオ殻には、テオブロミン、カフェイン等のアルカロイドの他にポリフェノールも含まれており、抗酸化作用も強い飼料です。
人ではテオブロミン摂取によりセロトニンの増加や血流の増加が確認されており、牛でも同様の効果が得られれば、夏場の体温上昇を抑制する可能性が考えられます。
冒頭の図は、テオブロミンやカフェインの化学式を示しています。複数のメチル基を有しており、これまで述べた生理作用もこれに関連するのかもしれません。