一般に堆肥の教科書では堆肥原料中の単糖、小糖類などの可溶性炭水化物は分解されやすく、速やかに堆肥中の微生物に消費されるという記述がなされています。このような発酵は、サイレージ発酵でも同様です。
この中で有機質肥料を製造されている企業の方から、堆肥発酵中に糖が生成されるという話を聞き、堆肥発酵中に糖含量を測定した報告がないかを調べたところ、冒頭の糖を測定した下記の研究報告がありました。それも少ない含量ではありませんでした。
確かに堆肥発酵中に温度が上がり、放線菌等の繊維を分解する菌の増殖が活発化すれば、糖(可溶性炭水化物)は生成されます。しかしその生成された糖は高温性のバチルス菌等に消費されると思っていました。
発酵中の糖が分析値として高い値で漸次減少していくということは、発酵菌による糖の生成と消費が同時に行われている可能性があります。このような糖の生成と消費による動的平衡状態では、放線菌やバチルス菌が共存して発酵がどんどん進み、堆肥原料は菌体や腐植の原料になっていくと考えられます。
一般に牧草や飼料作物においても、腐植含量の高い土壌は根張りがよくなるため、土壌からの栄養吸収がよくなり、生育にプラスになるでしょう。
この腐植は鉱物(ミネラル)が主体ではなく、有機物由来が主体です。牛の糞の主体は牛が食べたもの中で消化・吸収されなかった不消化物、つまり栄養成分的には炭水化物である繊維が主体です。このことから牛糞堆肥は腐植の主体となる有機物の原料になることになります。
繊維の多い牛糞は豚糞や鶏糞に比較し化学肥料的な成分は少ないのですが、腐植を作るためには、大きな役割をしています。
(参考研究報告)
「バーク堆肥の腐熟過程における化学成分変化と腐熟指標」:「北海道立農試集報」(52,31-40 (1985年))
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