発酵TMRで見逃されていること(3)「発酵TMRにおける乳酸菌と酵母の関係は?」

これまでのブログでは、発酵TMRにおいて乳酸菌による乳酸発酵に加え、酵母によるアルコール発酵が共存していることを示してきました。では、発酵中のTMRにおいて、乳酸菌と酵母の増殖における優位性はどのように変化するのでしょうか。過去に従事した発酵TMR関連の研究結果を踏まえ、私なりに推察・整理してみました。

複数のTMRセンターにおける発酵TMRの品質を確認してきた中で、共通して見られる傾向として、冬季にはエステル臭(芳香臭)が強く、アルコール発酵の影響が認められます。一方、夏季には酸臭が強く、乳酸菌による有機酸生成の影響が顕著です。

この季節差を微生物の増殖特性から考察すると、牧草やトウモロコシのサイレージ化とTMRの発酵化では、発酵条件が大きく異なることが理解の助けになります。

サイレージ化では、嫌気的環境、水分含量60%以上、原料中の水溶性炭水化物(WSC)含量が5%未満であることが多く、これらの条件下では乳酸菌が酵母よりも速く増殖し、pHが急速に低下することで残存糖が減少し、酵母の増殖余地は限られます。

一方、発酵TMRでは水分含量が50%以下であることが多く、原料中のWSC含量は5%以上と高めです。このような条件下では、乳酸菌の増殖とともにpHが徐々に低下しつつも、残存糖が十分に存在するため、酵母の増殖も活発になります。

夏季は品温が高く、乳酸菌の増殖速度が冬季よりも速いため、酢酸などの有機酸生成量が増加し、pHもより低下します。その結果、アルコール発酵も進行しているものの、有機酸臭がより強く感じられるのです。

以上の理由から、牧草等のサイレージに比べて、発酵TMR中のアルコール(主にエタノール)含量が高くなる傾向があると推察されます。

最近注目した下記の研究報告では、TMRの発酵過程において飼料成分を継時的に追跡した結果、発酵初期に澱粉の減少が認められました。TMRには生草が含まれておらず、原料に消化酵素が多く含まれているとは考えにくいため、この澱粉分解には一部の好気性菌や乳酸菌が関与している可能性があります。糖化が進むことで、発酵が促進されている可能性も示唆されます。

参考文献
• 「TMRの発酵貯蔵が貯蔵ロス及び牛胃内分解特性に及ぼす影響」『畜産技術』2017年11月号

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。