過去のブログの中でも指摘したとおり、牛においても飼料中の蛋白質が「糖新生」の代謝によりエネルギー化する場合、主に肝細胞内でアンモニアが発生します。しかしそのアンモニアは肝機能に問題ない限り肝細胞内で尿素に変換され無毒化されます。
人においては肝硬変等肝機能の低下が大きい場合、血中のアンモニアが増え、ひどい場合は肝性脳症というアンモニアによる毒性の疾病に繋がっていきます。
医学関連の記事をみると、血中アンモニアの由来は糖新生等の肝臓、筋肉由来ではなく、主に大腸にいる腸内微生物による蛋白や尿素の分解による発生が由来であるとしています。
しかし、泌乳牛においては、もっぱらルーメンから血中に移行するアンモニアが肝臓で尿素に無毒化し、それがMUNに反映しているという記事が多くみられます。
私の中では、泌乳牛におけるMUN,BUN(血中尿素態窒素)含量におけるルーメン、腸内のアンモニア発生、糖新生等からのアンモニア発生の寄与率は整理できていませんが、肥育牛の高BUNは「糖新生」の寄与率が高いとみています。
血中アンモニア濃度が高ければ、牛の受胎に影響することは多くの研究で明らかにされています。MUNの適正値も示されています。しかし、高MUNでも受胎に問題ない農家さんもいます。
あくまで私の推測の域を出ませんが、濃厚飼料多給の中で乾物摂取量が高い、乳蛋白も高い牛群では、バイパス蛋白量が高く、それがエネルギーとして使われている可能性が高く、高MUNはルーメンからのアンモニア量を反映しているのではないと判断してしまいます。
MUNは乳検に加入していれば、個体毎のMUNを知ることができますが、血中アンモニアを知ることはできません。その中で農家さんでもできることは糞のpHを測ってみることです。
澱粉の多い濃厚飼料多給にも拘らず、MUNが高く、しかも糞pHが7台になっていれば、血中アンモニアは高いと予想してしまいます。
下記に血中アンモニア、糞pH等と受胎との関係を調査した興味ある研究報告を見つけたので示しておきます。
また、冒頭の図は、医學事始 http://igakukotohajime.com/ (ブログ)の「高アンモニア血症 hyperammonemia」で示されていたものを使わせてもらいました。
(参考研究報告)
https://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/seika/jyouhou/H21/kachiku/H21kachiku001.pdf