今回は酪農家さんの経産牛の年間受胎頭数や死廃牛頭数の増減が年間の乳生産や収益性にどのくらいの影響を与えるかを知ってもらうため、おおざっぱなとらえ方ですが、数値化してみました。
この牛群(モデル)の状況において、管理を改善し、経産牛の受胎頭数を年間65頭に増加、死廃牛頭数を20頭に減少させた場合のその後乳生産や粗利益(乳代-飼料代)の増加は下記のとおりです。
死廃牛25頭は妊娠がない牛とし、これまで年間75頭中60頭受胎させていたところを65頭にした場合、平均分娩間隔は365日×75/60=456日から365日×75/65=421日となります。
また年間60頭の受胎では年間の泌乳前半(分娩150日までの)割合は38%となりますが、65頭になった場合は42%と4%増加します。この4%の増加は経産牛の1日1頭あたりの乳量として1.3㎏増加させることになります(標準泌乳曲線より算出)。
年間の死廃牛頭数を25頭から20頭に減らした場合の乳量増や初妊牛購入費等の試算を下記に示します。
このように、飼料メニューの蛋白やエネルギー濃度を上げなくても、周産期の管理レベルを上げ、経産牛の受胎頭数を増やし、また産後のトラブルを回避し死廃牛を減らすことができれば、粗利益改善は可能となります。
一方、更新率を下げ、経産牛の受胎頭数を上げていくと、高産次の牛が増えてくるため、乳房炎、産後のトラブルのリスクも高まる可能性が出てきます。この事実を踏まえ、上記の管理目標を決めていく必要があるでしょう。
次回は泌乳牛の乾物摂取量アップによる乳生産、収益性への影響を整理したいと思います。