牛の代謝、栄養、飼料等のトピックス(14)「「AIテスター」(膣内電気抵抗値測定による発情発見装置)は、発情発見、授精適期の判定に有効か?」

牛の発情発見に関してはこれまで、このブログの中でも触れてきました。今回は1970年代ぐらいから研究報告が散見されている牛の「膣内の電気伝導度(電気抵抗値)」の測定についてです。この専用の測定装置による発情発見、授精適期等の詳しい研究報告1)が最近研究機関で実施され、下記に示したように紹介されています。

今回この調査結果に刺激され同様な測定装置がないか調べたところ、同じような膣内の電気伝導度を測定する装置が海外(中国製)でも販売され、前述の国内製の装置の価格の1/10以下(15,000円前後)であることを知り購入し、実際酪農家さんの協力を得てホル泌乳牛を対象にこの装置を使い、発情時、非発情時(エコー等での確認)での膣内の電気抵抗値を測定し、発情発見が可能かどうかを検証してみました。

下記の研究報告による装置(「AIテスター」)の利用方法は、発情期、膣内に移行する子宮管粘液の電気抵抗値(VER値)は低下し、さらにその発情期のVER値の微小な変化で授精適期を見つけるものです。 この装置を使った受胎率等から酪農家さんに普及できるものと捉えています。

私が今回実施した、海外(中国製)のAIテスターも発情期、非発情期にVER数値に明らかな違い見られ、このAIテスターでの測定により、発情発見、AI適期の見定めに役にたつと判断しました。

しかし、このAIテスターには、標準液による電気抵抗値の補正機能がついておらず、その測定数値の絶対値等が気になったため、同じ装置2台を使い確認してみました。測定値間の相関は高いものの、絶対値に差がみられました。
そのためこのAIテスターでの判定精度は低くなりますが、膣から粘液が漏出していなくても、粘液の粘調性はこの装置で十分判断でき、発情発見に昔からから使われている膣鏡と同様に発情発見の有力な補助装置になるでしょう。

冒頭の写真は、今回紹介したAIテスター(中国製)です。

(研究報告)
1) https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001577.html
(調査・報告 畜産の情報 2021年4月号 繁殖雌牛における腟内電気抵抗値と発情周期および受胎率との関係)

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。