牛の飼料、栄養、代謝等でのトピックス(6)「牛にとって「ポリフェノール」は?」

過去のブログにおいて、豆腐粕や醤油粕等の大豆由来飼料等に多く含まれるポリフェノール類に分類される「イソフラボン」について触れました。今回はこれを拡げて食品副産物等にも多く含まれるこの「ポリフェノール」について、牛への代謝への影響を簡単に整理したいと思います。

ポリフェノールは牛にとって他の家畜、動物と同様、必須の栄養素ではありません。また牛の飼料は植物由来ですが、それに含まれるポリフェノールは数多くあり、含有量もさまざまです。
しかし、多くの種類が牛の健康や乳生産に影響が覗える機能性物質であることは確かです。私が重要視している「ポリフェノールにおける牛の代謝に与える影響」は「抗酸化作用」(活性酸素種を抑える)があるということです。牛も暑熱ストレス等の「酸化ストレス」が体内に発生しており、それを抑えるものが多いのです。酸化ストレスが多く発生する肝臓にとっては、助っ人的な物質です。実際、牛においてもいくつかのポリフェノールはその研究報告において、肝機能の改善の結果が出ています。

私が食品副産物や牛への未使用な物の飼料化に携わった中で、このポリフェノールを牛が摂取する場合に注意すべき点をアマニ種子等の研究結果を例に挙げ整理したいと思います。
アマニ種子には、αリノレン酸が多く、適正量与えることで牛の受胎に好影響を与えるという海外の研究報告が出され、その研究を手掛けたことがあります。詳しい研究内容はお話しできませんが、この研究結果で確認できたことは、アマニ種子には、αリノレン酸等の油脂が多く含まれている他にアマニリグナンというポリフェノールが多く含まれます。アマニ種子を給与した結果、血中の中性脂肪は増加したが、血中コレステロールは逆に低下する傾向があったということです。

一般に多くのポリフェノールは人等の血中総コレステロールを低下作用があり、前述の「抗酸化作用」等同様、人においては生活習慣病(メタボリックシンドローム)の予防として注目されているものです。
牛において注意すべき点は、牛の分娩後血中コレステロールが低値の場合、受胎に影響することが知られています。この「亜麻仁リグナン」の摂取のように、牛の受胎等にとってよくないケースもあるのではということです。
この他、カカオやコーヒーのハスク(殻)等も一部飼料として給与されています。これらに含まれるポリフェノールやアルカロイドの中には体脂肪の代謝促進や動員の作用があります。しかし、これらの作用も牛が分娩し体脂肪が急激に使われている時に給与した場合は肝機能の負担が心配されます。

このように人では、飽食の時代で健康に良いという食材も牛にとっては逆に健康に良いのかと疑問視されるものもあります。食品副産物等、牛になじみのない飼料を給与する場合は十分栄養、代謝的情報を整理し出来れば、一般に給与前には試験的な給与を行い、血液、乳成分等の検査を実施し問題ないことを確認してから実施することを薦めます。

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。