泌乳牛においては、通常の飼料メニュー(醤油粕などの塩分の多い飼料以外)では塩の給与は必須です。
しかし、乾乳牛については乳房(牛乳)への塩分の移行はなく、塩の給与は特にしていない農家さんが少なからずいます。
一般に通常の飼料では、乾物当たりのナトリウム(Na)含量は0.1%以下が多く、それに対して乾乳牛の塩(NaCl)の要求量は給与飼料乾物当たり0.25%になります。
実際、乾乳牛に塩を給与していない農家さんでは、不足が気になり尿を舐めるなどの行動がないかを聞くと、あると答えが返ってくることがあります。
特にこれから夏になり、塩分の要求量が増します。そのため通常の飼料以外からの塩の供給は必要です。1日1頭当たり20~30g程度を給与した方がいいでしょう。
乾乳牛の浮腫の原因としてナトリウムの摂取がありますが、これは過剰に給与した場合です。乾乳牛の場合、同じ陽イオンであるカリウムが過剰になるケースが多く、このカリウム過剰も浮腫の一因になり、また尿はアルカリになるため低カルシウム血症の一因にもなります。
ただ、乾乳牛は問題になりませんが、泌乳牛においては、下記の式が示すとおり、Naを多くとるほど、尿量が増加することを承知しておく必要があります。
同じナトリウム源である重曹は塩(NaCl)と異なり、血液をアルカリに傾ける働きがあり、尿のpHを上げる作用があるため、乾乳牛への給与は一般には薦められません。
尿量(1日量kg)=0.12×Na摂取量(1日量g)+0.06×K(1日量g)1)
(参考文献)
1))A.Bannink et al. ; J.Dairy Sci.,82(5), 1008(1999)