堆肥発酵で見逃されていること(8)「長年、飼料畑に堆肥を入れ続けると…」

酪農家さんの飼料畑を土壌検査する機会がありました。土壌pHが7.0以上のところが多く、飼料作物の至適pHとは異なっています。
WEB等の飼料作物栽培の記事を見ても、一般の飼料畑の土壌pHは酸性土壌であり、石灰等のアルカリ資材を施肥して、pHを上げることが必要としています。
私が過去牛糞尿堆肥の試験に携わっていた時に、この堆肥を土壌に施肥する際に土壌pHを測定しました。その時の記録を改めて見ると飼料作物の適正pHの上限値6.5程でした。この圃場も牛糞堆肥を長年散布していた圃場でした。

平均乳量は30㎏~40㎏の牛群の飼料メニューは、ミネラルの不足を防ぐため充足率を平均150%以上にしている農家さんが多いのではないでしょうか。
泌乳牛において、エネルギーを泌乳期全般にわたり100%充足させることは代謝的に不可能ですが、ミネラルの充足は可能です。給与したミネラルは牛乳として外に持ち出されている以外は、そのほとんどが牛の糞尿中に含まれ牛糞尿堆肥となって圃場に施肥されるのです。

一般に牛糞尿堆肥で問題にされるのは、飼料作物の硝酸態窒素やカリウム過剰です。確かに飼料作物のカルシウム、マグネシウム、リン含量が作物生理から過剰になることはないでしょうし、また例え高値になってもその摂取量は多くはなく、牛への障害はないでしょう。しかし、それらのミネラルの土壌溶脱は多くはなく、陽イオンのミネラルが土壌に蓄積されていけば、土壌のpHを上げる一因となり、上記の事例のようなことが多くなるのではと疑ってしまいます。

また、気になる記事(土壌のpHや有効態リンが過剰になると圃場の雑草を繁茂させるという主旨)を土壌の研究者が示していました(下記参照)。
土壌のpH、EC、硝酸態イオンの測定は堆肥と同様に簡易の測定器等で農家さんが実施できるものです。
すでに野菜農家さんの一部では、「農業科学」の知識を駆使し、これらの測定器等を使い、作物の生育、栽培状況との関連をチェックし、求める品質、収量の作物にしようとしています。

冒頭の写真は、私が使用している簡易測定器の一つの堀場のECメーターです。

(参考記事)
西尾道徳の環境保全レポートNo.132 「黒ボク土のpHと可給態リン酸上昇が外来雑草を助長」

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。