前報では一例として乾乳前期は基本的に良質の乾草を飽食させることをお話ししましたが、「良質」の具体的な目安としては、粗たんぱく質は乾物当たり12%前後、TDN58%前後、乾物量は少なくとも10㎏以上を牛が採食できる品質ということを示したいと思います。しかし、これを府県において単体でクリアする流通乾草を一般に給与することは現実的にむずかしいことも確かです。そのため、ルーサン乾草を組み込んだり、また採食量を上げるため細断する必要が出てきます。この方式もできないとしたら、乾草給与のみでは蛋白、エネルギーが不足するため他の市販の飼料等でそれを補う必要も出てきます。
乾乳牛への飼料メニューも「飼料計算」すれば、示すことはできます。しかし、実際に計算どおり採食しているかを正確に掴むことはむずかしいところもあります。
乾乳牛のMPT(代謝プロファイルテスト)を採血して実施すれば、蛋白やエネルギーの充足を推測することは可能です。しかし、農家さんが簡単にできるものではありません。
このような状況で農家さん自身ができる方法として、人が糖尿病等の際に自身で血糖値やケトン体(BHBA)を測定できる簡易測定器を紹介したいと思います。
人用の市販品が多くある中、精度の高い国内品は「ニプロスタットストリップXP」というものです。
一般に血糖値はエネルギー充足の影響も受けますが、ストレス等でも高くなる場合があり、そのため、乾乳牛ではエネルギー不足の時に体脂肪の動員が起きた時に高まるケトン体(BHBA)も同時に測定します。これにより、下記の牛のエネルギーの過不足を凡そ判断できます。
判定項目 | 血糖値(mg/dl) | BHBA値(mmol/l) |
エネルギー過剰 | 65以上 | 0.6未満 |
エネルギー不足 | 55以下 | 0.6以上 |
「代謝異常」 潜在性ケトーシスの疑い | 50以下 | 1.4以上 |
「インスリン抵抗性」の疑い | 65以上 | 0.6以上 |
分娩直前を除き、乾乳牛が血糖値65㎎/dl以上且つBHBA0.6mmol/l以上の時は、異常な代謝状態(インスリン抵抗性が高い)の可能性があり、分娩後のトラブルが十分予想されます。この値が出た時には、既報で述べたとおり、インスリン抵抗性を緩和するケアーが必要になってきます。