堆肥発酵で見逃されていること(10) 「わが家飼料畑の土壌pHは?」

既報ブログで関係する酪農家さんの土壌分析を実施した結果、土壌pHが高くなっていることをお話ししました。府県の酪農家の経産牛1頭当たりの飼料畑面積は一般に少なく、また長年牛糞尿堆肥を入れ続けている方も多くいます。

そこで府県の飼料畑の土壌肥料成分はどうなっているかが、気になり調べたところ、群馬県の畜産試験場が管内の酪農、肉牛農家さんの飼料畑の土壌診断をしていました(下記参照)。
冒頭のグラフはその調査結果の一部です。
この結果は2009年時の研究報告ですが、すでに農家さんの測定した飼料畑土壌におけるpHの5割以上が飼料作物の適正pHの上限、6.5を超えていました。また、pH6.5以上の土壌においては、冒頭の図に示された各土壌肥料成分性状の平均値は適正値を示しています。
日本の土壌は飼料畑になる前はpHが6.0以下であった場合が多いでしょう。20年、30年と牛糞尿堆肥(5トン/10a以上)やアルカリ土改材を入れ続ければ、同様な結果になるのではと判断しています。

今年の化学肥料の価格は値上がりしており、来年の供給も不安定であることが予想されています。
化学肥料を使っている方は、実際、自分の飼料畑の肥料成分がどのくらいあるかを土壌分析等で整理し、化学肥料を節減することは酪農生産費低減策の一つです。
また、化学肥料を使っておらず、飼料作物の硝酸態窒素やカリウムが高い場合でも既報のブログでも述べているとおり、工夫すれば十分問題なく貴重な粗飼料源として利用できます。

これまで10回に渡り、主に自分の経験をもとに堆肥の利用について説明してきました。
国内においては、堆肥は益々「有機質肥料」として使う価値が多くなっていきます。そのためには見逃されている堆肥技術を理解、駆使することも一策ではと思います。

(参考研究報告)
「土壌養分が飼料作物の成分組成に及ぼす影響」(群馬畜試研報 第16号(2009): 115ー122)

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。