私が食品副産物の飼料化の研究開発に従事した時に、「コーヒー豆粕」の飼料化を検討したことがありました。
しかし、可消化のエネルギー価は籾がら程度と低いことやそれに含まれるカフェインやクロロゲン酸等のアルカロイドやポリフェノールは多く、何キロも牛に給与できるものでないと判断し、本格的な試験には至りませんでした。
ポリフェノール等には抗酸化作用がある一方、血清コレステロール値の低下作用もあり、泌乳牛や肥育牛では、過量に給与した場合、受胎や増体に悪影響を及ぼすと判断しています。
ウェブ等を見れば、「コーヒー豆粕」の飼料利用に関する情報も流れていますが、前述の内容に留意する必要があるでしょう。
その中で最近、コーヒー豆には、「グルコマンナン」という多糖類が多く含まれていることを知りました。その含有率は乾物当たり20%程度含まれていう報告があります1)。
グルコマンナンという多糖類(構造式は冒頭の図参照、構成単糖はグルコースとマンノース)は人や豚などの単胃動物ではその分解酵素を持たずエネルギー源にはなりませんが、ルーメンを持つ牛では、ルーメン細菌等が持つ酵素によりグルコマンナンオリゴ糖などの低級分子になっていきます2)。
そのため、グルコマンナンオリゴ糖や不消化のグルコマンナンが腸内においての乳酸菌等の増殖、あるいはそのカビ吸着作用が知られているグルコマンナンによりカビ毒の血中への抑制が期待出るのではと思っています。
しかし、これはあくまで私の推論であり、やはり実際牛等にコーヒー粕やカビ毒を投与して、腸内微生物叢の変化やカビ毒の血中への抑制効果があるかを調査する必要があります。
私の中では今後機会があれば、酪農家さんに協力いただいて、1頭あたり乾物500g程度「コーヒー豆粕」を給与して、先ずは糞性状等を調べることができればと思っています。
(参考文献)
1) Coffee’s carbohydrates. A critical review of scientific literature:Voume 71 Issue 3/11 / http://dx.doi.org/10.21931/RB/2022.07.03.11
2) Degradation of β-mannan by Rumen Bacteria: Anim. Sci. Technol. (Jpn.) 65 (5):443-446 443