腐植酸は、「腐植質」から溶出されるフェノール基やカルボキシル基を持つ、多分散性高分子混合有機物と見なされ、含有するフミン酸、フルボン酸等により複数の生化学的性質を持ち、単一の化合物ではありません。この性状の中でタンニン、フラボノイドのようなポリフェノール化合物の特性と同様、抗酸化、抗菌性を示しています。
あるメーカーは「活性水」に、さらにポリフェノール類を含むハーブ系の資材や種々の糖類等を加えて、「良質のサイレージ」を作ることを薦めています。学術的な無添加を対照とする厳密な研究報告がないため、どのようなメカニズムで「良質サイレージ」になるかは私のサイレージの知見では整理できませんでした。
牧草をサイレージ化する場合の腐植酸添加の影響についての学術的な研究事例は探すことはできませんでしたが、ルーメン発酵への影響の研究事例1)、2)はありました。それによると、ルーメン微生物に影響を与え、無添加と異なる発酵パターンが示されていました。
前報で説明した「BMW技術」による生成された「活性水」には、この腐植酸が含まれています。
尚、過去、牧草サイレージ調製の際に無添加と「活性水」と称するものとの比較試験が実施されていますが、差は見られていません3)。
ここからは、一般的な牧草のサイレージ化の理論から、前述の「BMW技術」による「良質サイレージ」調製の不思議さについて整理したいと思います。
一般にアンモニアやアミン類等の毒性物の多いサイレージにしないためには、これまでのプログでも説明してきたように乳酸菌主体により乳酸発酵させるか、あるいは現実的ではありませんが、抗菌性の高い添加物をいれるか、またはその両方の処置をするかです。
牧草において、一般にWSC(可溶性炭水化物)が原物1%程度で水分が80%以上と高水分であれば、よほど硝酸態窒素が高い(抗菌性強い)、あるいは緩衝能が低い、十分な乳酸菌数があるなど特別な発酵条件がない限り、「良質のサイレージ」の可能性が低いと考えてしまいます。
このような特別な発酵条件がない中で、前述の「BMW技術」で「良質のサイレージ」ができたとしたら、それはよほど「抗菌性」が高い商材を加えて、好気性菌や酪酸菌を抑えなければなりません。
また、この「抗菌性」がどのくらいあるかの量的な抗菌性の検証は、試験として、牧草をサイレージ化する際に、サイレージ化前の材料草の水分、飼料成分、貯蔵温度等、詳細に発酵条件を確認し、無添加との発酵品質の差を調べた中で、初めて把握できると判断します。
冒頭の図は、前報ブログで紹介したBMW技術により、尿を「活性水」にする方式の概略図を示しています。
次回は「腐植酸」のアンモニア等の消臭作用について整理したいと思います。
(研究事例)
1)“Effect of humic acid of fermentation and ciliate protozoan population in rumen fluid of sheep in vitro” (Journal of the science of Food and Agriculture :Vol 89, Issue 11,2009)
2)“Effect of humic substances on rumen fermentation, nutrient digestibility, methane emissions, and rumen microbiota in beef heifers”(Journal of Animal Science, Volume 96, Issue 9, September 2018, Pages 3863–3877)
3)「ふん尿発酵産物の飼料的利用1.ミネラルと微生物で処理した牛尿、いわゆる活性水の添加がサイレージ発酵に及ぼす影響」(J.Rakuno Gakuen Univ.,20(1):175~179(1995))