バルク乳の乳成分はどんな栄養・管理条件で変わるの?

今年は8月以降猛暑が続き乳量、乳成分の低下に苦労している農家さんもいるかと思います。バルク乳成分の変動の主要な要因としては、「飼料メニューの栄養条件の相違」、「牛群の遺伝的相違」 、「牛群の泌乳ステージの変動」の三つがあるのではと思います。

これら三つの要因が複合して農家さんのバルク乳の乳成分が決まるわけですが、大まかにでもそれぞれどのくらいの値で影響しているのか知るため、下記のように誤解を恐れずモデル的パターンを作り比較してみました。

1) 栄養条件による乳成分(乳脂率、SNF率)変動は? 

表1は個体毎を示していますが、群全体にも適用できるものです。乳成分に大きく影響する栄養バランスは三つに分けられます。①低繊維、高NFC ②高繊維、低NFC ③適繊維、適NFC(飼養標準通り)です。それに加えて個体、牛群のエネルギー充足度合いがプラスに向かうか、マイナス向かうかの栄養条件が加わります。もちろん、給与飼料の粗蛋白、粗脂肪レベル、粗飼料因子量、給与方法等も乳成分のバランスには影響してきます。

2)乳成分における遺伝的相違による影響は?

表2は牛群間における乳成分の遺伝的相違として2つのパターン(標準的と低成分の牛群構成)に分け比較しています。牛群の乳成分における標準的な構成に対して乳成分の低い牛が2割増加すると、凡そ乳脂率、無脂固形率とも0.05%前後低くなります。このことからよほど乳成分の低い改良をしない限り、バルク乳への寄与率は低いと判断しています。

3)牛群泌乳ステージの相違による影響は?

表3は牛群の泌乳ステージによる違い(平均搾乳日数150日と平均搾乳日数190日の比較)による乳量、乳成分の違いをモデル的に示しています。前報でお話ししたとおり、牛群における年間の分娩間隔を短くする、つまり年間の平均搾乳日数が短くなれば、年間の平均乳量も増加します。この場合、牛群の泌乳能力が同じ年間1万㎏牛群でも1日当たりの平均乳量はモデル的には1.4㎏増加するとともに、乳成分は0.05%程の低下となります。乳成分への寄与率は高くありません。
しかし、分娩が偏り、泌乳前半の牛が6割以上になった場合、表3のモデルに当てはめれば、乳脂率3.55%、SNF8.45%となり、牛群の栄養条件に大きな問題はなくても乳成分はぎりぎりの値になる確率が高くなります。
このモデルから確認できるように年間の平均搾乳日数が伸びるほど、夏季の乳成分低下には抑制的に働きますが、1頭当たりの乳量は低下していきます。

夏季、乳成分が低下する大きな要因はやはりこれまでより粗飼料の喰いが悪くなり、エネルギー充足が低くなる等の飼養的条件であることが確認できました。この原因の他に遺伝的に乳成分の低い牛群、さらにこの時期、泌乳前半の牛が多くなれば、乳成分で苦労する確率は高くなります。

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。