子牛は生まれて、固形飼料がルーメンに入って徐々にルーメン発酵が高まり、ルーメンの容積も大きくなっていきます。そのため子牛に親牛と同じ固形飼料を与えてもルーメンでの蛋白、澱粉の分解は低く、そのバイパス率は高いものがあります。 まだ、子牛は消化器官が単胃動物に近いにもかかわらず、なぜわざわざバイパス率の高い大豆粕製品を給与するのでしょうか?
子牛であれば、通常の大豆粕でもルーメン発酵によりアミノ酸やアンモニアになるのは少なく、多くはそのまま蛋白として第4胃以降に入っていきます。そしてアミノ酸として吸収されるはずです。 しかし、子牛に通常の大豆粕とバイパス処理した大豆粕を給与した場合では糞性状が異なる場合があります。
腸内発酵においても大豆粕のバイパス処理等で蛋白の分解度は異なり、大腸に過剰なアンモニアが発生した場合、糞性状に影響を与え、また発生したアンモニアは血液に吸収され肝機能の解毒作用に影響を与えることが推測されます。 但し、腸内発酵が盛んになり、大腸において菌体蛋白が増えても糞便に排出されるだけで牛の蛋白源にはなりません。
このように、大腸等の腸内での細菌等による蛋白や炭水化物の分解速度がルーメン発酵と同様に腸内細菌叢にも影響を与え、また牛への代謝にも影響を与えていると考えられます。
牛は一般にルーメン発酵によるエネルギーや蛋白の獲得が大きく、腸内発酵による栄養獲得は少ないことは確かです。そのため腸内細菌による短鎖脂肪酸やアンモニアの発生に関する牛への定量的な研究はあまり進んではいません。しかし、腸内は免疫細胞がおおよそ体内全体の7割集まる場所であり、それに大きく影響する腸内発酵を正しく理解することが重要です。
泌乳牛と同様、なぜ子牛においてもバイパス蛋白が必要かを、ルーメン発酵にあるのではなく、腸内発酵にあるのでは、という私なりの考えに基づき整理して みましたが、いかがでしょう? 腸内もルーメンと同様過剰なアンモニアや乳酸の発生は大きな問題です。子牛おける腸内発酵におけるバイパス蛋白の影響の研究はもっと進んでほしいところです。