子牛の「人工乳」は「代用乳」を補える?

酪農家さんが肉用子牛(ホル雄、F1、ET和牛等のスモール)を市場に出す場合には、既報で触れたとおり、ほとんどの農家さんは代用乳は標準量より多給しています。                         それは発育がよく、市場での購入価格が高くなるためでしょう。                             また、それは子牛が満足するほど代用乳を飲ませることにより、免疫力/抗病力に必要な栄養を充足させるという子牛の栄養・生理学に基づいています。                                    

一方、子牛が満足し残してしまうほど代用乳を給与すれば、人工乳を併用しても、そうでない場合に比較し、食べる量は少なくなります。                                           代用乳の制限給与(旧来の標準量)では、子牛に出生1週間前後から早くに人工乳をルーメンに入れることができれば、その量に応じて3カ月齢程度まではルーメンは早く発達すると思われます。                                既報で示したとおり、人工乳摂取のスタートダッシュをよくするのが「バーデンスタート」です。このスタートダッシュに焦点を絞り、本品を利用するのは有効と判断しています。                                

子牛の哺育の重要な点は、子牛の免疫力/抗病力を保つ栄養を充足させることです。                  これを代用乳、人工乳を使って実現する哺育システムであれば、その方法が違ってもいいはずです。           ここで、代用乳、人工乳の開発に携わった中で私の中で整理された一つの哺育システムをここに紹介したいと思います。

本方式をうまくいかせるポイントは「発酵初乳」を十分飲ませることであり、また人工乳の摂取を早くからさせる「バーデンスタート」の利用です。そして、嗜好性、消化性の高い人工乳を十分採食したのを確認して「一回哺乳」にすることです。 これにより、旧来の代用乳「制限給与」(標準量)の哺育中の増体、発育をアップさせることは可能と見ています。

今から20年前、「一日一回哺乳システム」の開発に携わり、普及に努めた一人として、本哺乳システムは真冬でも氷点下にあまりならないところでは、人工乳の採食を促進させるため、自由飲水にし、前述の「バーデンスタート」を用い、またハッチ等を使い換気をよくすれば、その当時ホルスタイン種であれば、1日、1回の代用乳の給与でも通常の離乳時月齢や3ヶ月齢時の増体、発育は標準並み、ルーメンの発達からか、粗飼料の食い込みはよい傾向がありました。ただ一般的な普及には至りませんでした。 是非、数ある「人工乳」(スターター)から嗜好性、採食性の高い人工乳を見出し、上記を参考に、哺育時の飼料費低減を目指す中、旧来の代用乳の制限給与方式による離乳時までの増体、発育をよくしてはいかがでしょう。

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。