同じ配合内容のTMR(飼料メニュー)では泌乳牛群の乾物摂取量を上げることは簡単ではなく、また例え乾物摂取量を1㎏上げることができても乳生産量は1㎏程度のアップに留まることが多いことを前報で述べました。
そのためどうしても乾物摂取量を上げ乳量アップを狙うには、TMR中の繊維(NDF)の消化率を上げる方策が必要になってきます。
TMRの繊維の消化率を上げる方策は大きく二つに分かれます。
1. TMRの潜在的消化率を上げる:
TMRに組み込んでいる乾草やサイレージ中の消化しやすい繊維(Oa分画)を増やす、つまりその飼料が持つ潜在的にNDFの消化率が高いものを組み込みということになります。しかし、流通乾草を組み込んでいる場合、このような乾草は単価的にアップすることが多く、また自給飼料の場合、これまでより刈取り時期を早くしなければならず、その場合圃場単位面積当たりの乾物収量の減少や高水分のため発酵品質の低下に結び付くというマイナス面が出る場合があります。
これ以外の方法でTMRのNDF消化率を上げる策は、長物粗飼料の一部をOa含量の高い他の飼料原料(例えば、大豆皮、あるいは豆腐粕、リンゴ粕等の食品副産物から見出す)に置き換えてみることです。これにより食い込みが上がり、乳量がアップすれば当初の目論見は成功です。乳脂率等の乳成分が好ましくない値になれば、これらの原料の微調整を試みればいいのです。
2. 繊維分解菌の増殖を高める(繊維分解菌の繊維の消化能力をアップ):
一般にTMR中の澱粉含量を上げていくとエネルギー濃度が高まり、乳量はアップしていきます。その一方でルーメンpHは下がっていき、アシドーシスのリスクが高まり、繊維分解菌の活性が弱まるという飼料設計のジレンマが出てきます。澱粉含量や蛋白含量・蛋白分画も現状(最適)なままで繊維分解菌の増殖を高める術はあるのでしょうか?
それは、飼料中の遊離アミノ酸含量を増加させることです。食品副産物には製造工程の中で酸処理しているものがあり、その場合遊離アミノ酸が多くなっています。そのような副産物飼料を産出している食品工場がないか、調べてみてはいかがでしょう。
牛が摂取する4大成分(脂肪、蛋白、NFC(澱粉等)、繊維)の中で一般に繊維が一番消化しにくい成分です。そのため牛は繊維含量の高い牧草等の粗飼料の繊維を分解するため進化の過程で咀嚼・反趨し、繊維を消化するためのルーメンという巨大発酵タンクを作り上げていきました。
牛に乾物摂取量を上げてもらうには、牛にこの巨大な発酵タンクをフル稼働させてもらう必要があり、飼い主が牛の食い込みを記録し、反芻回数(嚥下間)が十分か(平均60回以上)、あるいは「糞洗い」等を実施して繊維の消化に問題ないかをチェックして、問題があれば速やかに是正してやらなければなりません。