飼料設計モデルの見逃されていること(6)「水溶性ビタミンの添加は?」

前回のブログにおいて、一部触れたビタミンA、E等の脂溶性ビタミンは肝臓等の組織に蓄積されるが、大量投与しても蓄積されず尿に排泄が多くなるビタミンB群等の水溶性ビタミンは、継続的に摂取、生成されないと不足になる可能性は高くなります。

牛の場合、水溶性ビタミンは飼料中に含まれる他、ルーメン微生物により生成されるため、一般には不足することは少ないとされています。しかし、肉牛等の濃厚飼料多給では、ルーメン微生物のビタミンB1の生成量が少ない場合、大脳壊死症などという欠乏による疾病発生があることも事実です。 このように牛は人や他の家畜のような単胃動物と異なり、ルーメンでの水溶性ビタミンの生成、分解やルーメン微生物の水溶性ビタミンの必要性等を把握しなければならず、どのような状態の時に不足するか、あまり整理できていない栄養成分であると言えます。

その中で大量投与によるナイアシン、ビオチン等の牛への代謝、乳生産の研究報告はこれまで出されています。ただ、バイパス処理されていないこれらのビタミンは、ルーメンで利用、分解される他、一部血中に移行するため、その動態や作用を複雑化しています。
一般にビタミンB群等の水溶性ビタミンは代謝に関わる酵素の補酵素/補因子です。大量投与した場合、直接的に細胞レベルに働きかけて、一般的な代謝への影響とは異なる薬理的作用をする場合があります。

私が注目しているのは、「バイパスナイアシン」です。牛にバイパスナイアシンを大量投与した場合、牛の血流をよくすることは確実のようです。
このような作用により、暑熱時の牛の蓄熱を防いだり、代謝の低下による種々の障害が少なくなる可能性があります。この研究事例を下記に示しておきます。しかし、本品の費用対効果を見極めて使う必要があります。

私の乳牛の飼料設計における水溶性ビタミンの捉え方は、やはりルーメン/大腸アシドーシスの状態にしないで、繊維の消化を高めるルーメン発酵状態にすれば、ルーメン微生物による水溶性ビタミンの生成により乳牛に必要な水溶性ビタミンの不足のリスクは現時点では少ないという捉え方になってしまいます。

(参考研究報告)

 http://www.naro.affrc.go.jp/org/karc/qnoken/yoshi/no78/78-069.pdf

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。