牛の飼料・サイレージで見逃されている点(7)「メチル基とS基多く含む食品副産物を探しては」(ⅱ)

前回のブログでは、飼料等の食に含まれるメチル基やS(イオウ)基、SH基が牛の代謝にも重要な役割をしているのではとお話しました。
今回は具体的にどんな食品副産物等の商材に含まれているかを整理します。
牛の飼料である作物を含めた動・植物細胞、微生物等の生命体には必ずリン脂質が細胞の構成要素になっています。また中性脂肪、VFA等の脂肪酸やアミノ酸の中にも分子内にメチル基を有しているものがあります。

この中で分子内に複数メチル基を持っている生体内物質はコリン含有物、ベタイン含有物があります。ベタインは甜菜糖蜜中に3~8%ほど含まれています。甜菜糖蜜添加量の多いビートパルプはベタインが多くなります。尚、豆腐粕、醤油粕(特に丸大豆醤油)等に多く含まれるレシチンからも生体内でベタインが生成されます。

次に分子内にS基をもつ生体物質、その代表はアミノ酸の一つであるメチオニンです。メチオニンは高泌乳牛においてリシンと同様不足しやすいアミノ酸です。
アミノ酸の一つであるシスチン、システインもS、SH基を分子内に有しており、メチオニンと同様、人では解毒作用等が知られています。

蛋白質中のメチオニン含量割合が高い飼料は動物性飼料に多いのですが、牛がA飼料として使えるのは、乳、たまご、昆虫由来の副産物等になります。
蛋白質中のシスチン、システインが多い作物はブロッコーリー、タマネギ、ニンニク等です。これらは何れも食品分野では酸化ストレスに効果が知られており、これらの農産加工副産物等による安価な飼料流用を期待したいところです。

しかし、牛の飼料である牧草や飼料作物からは、今回紹介したメチル基供与体のような「メチレーション」に関わるアミノ酸やリン脂質は少ないのですが、ルーメン細菌やブロトゾアにおける蛋白質中のこれらのアミノ酸割合は高いため、やはり、ルーメン発酵を高め、菌体蛋白量を最大限高める給与方式が必要であることは言うまでもありません。
冒頭の図は、これまで述べたメチレーションが多くの代謝に密接に関わり、細胞、生命の活動そのものを示しているとも言えます。

(参考記事)
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000465.html

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。