これまでも食品副産物を取り上げる中で、栄養素(5大栄養素)としてではなく、有用な機能性物質にも注目してきました。今回は過去、食品副産物中の機能性物質の研究に従事した中で、農家さんにも知ってもらいたい「ブロメライン」、「グルコマンナン」、「テオグロミン」、「タンニン」等を順次このブログで紹介していきたいと思います。
第1回目は、「パイン粕」に含まれる植物性の蛋白分解酵素である「ブロメライン」を紹介します。 ブロメラインは酵素であるため、高温(60℃以上)で乾燥すれば、酵素活性は失活します。
缶詰工場等から出る生パイン粕をサイレージ化する場合、その懸念は少なくなります。
このようなパイン粕を発酵TMR等の発酵飼料の原料にすれば、本酵素によりTMR中の遊離アミノ酸は増加します。
また、このブロメラインは、人の血栓予防や治療薬に使われるものです。
しかし、ブロメラインは蛋白質であるため、消化管では消化液により失活化すると思われますが、そうではありません。
現在では腸内には「タイトジャンクション」という高分子の物質を血中に移行する代謝もあり、単純ではありません。
注目すべきは、肉牛の肥育後期にパイン粕を給与した場合、その枝肉中のアラニン、グルタミン酸という「うまみ」成分のアミノ酸が大きく増加する報告例(冒頭の表、特許341316号(期限切れ)より転用)です。 前述のブロメラインの医薬品同様、ブロメラインあるいはそのSH基、ペプチドが機能して、枝肉内の蛋白質を分解しているのです。
冒頭の図に示した特許の給与事例では、パイン粕(乾燥)を1㎏程度、出荷までは半年給与することで、屠体した後の枝肉中のアラニンやグルタミン酸が増加しています。
人におけるブロメラインの薬理量は、牛に換算した場合にはパイン粕1㎏程度の給与量ではその薬理量の1/10以下ですが、ブロメラインは、SH基を持った酵素です。
このSH基は過去のブログで説明したように抗酸化作用の代謝に関与するものです。
ブロメラインは、血栓の溶解に関わるだけでなく、効能薬理としては、抗炎症作用、創傷治癒作用などが知られています。
ブロメラインのような植物性蛋白分解酵素は、「パパイア」、「キウイ」、「イチジク」にも含まれています。
ブロメラインについて、詳しいことを知りたい方は、下記に載せておきました。
(参考文献)
1)パイナップルに含まれるタンパク質分解酵素ブロメラインの研究動向:生化学および抽出・精製(東京医科歯科大学教養部研究紀要第 53 号:15〜24(2023))