牛の代謝、栄養、飼料等でのトピックス(11)「飼料高騰の中、「第一胃刺激用具」の活用は?」

前回のブログで述べたとおり、繊維含量の高い食品副産物(ビール粕、緑茶粕、キノコ菌床粕等)は乾牧草等の所謂長物粗飼料と同様、繊維含量は50%以上のものが多いのですが、その「かさ」(容積)は少なく、乾物1㎏当たりの粗飼料因子量(飼料の物理性、反芻刺激)も低いことが特徴です。また、トウモロコシ、大麦等の穀類に比較し、多くは澱粉等の炭水化物が少ない特徴もあります。
このように繊維(NDF)含量が高いにも関わらず、反芻刺激は弱いのですが、ルーメンpHを下げる傾向は穀類より低い特徴があります。
泌乳牛において前述の繊維含量の高い食品副産物をどれだけ給与できるかを掴みたいところです。

TMR等の飼料設計をする上で牛の反芻刺激を適正にしなければならないため、その指標の一つにpeNDF(物理的有効繊維)があります。泌乳牛の適正値はpeNDFの測定方式にもより違っています。
国内の研究機関の試験結果を見ると長物粗飼料のおおよそ1/2~1/3程度です。そうするとどうしても乾牧草等の長物粗飼料を給与する設計になります。
私は一時期、「第一胃刺激用具」(商品名「ルーメンファイブ」、冒頭の写真)の泌乳牛のルーメンにおける反芻刺激を調査したことがあります。
無投与の飼料メニューによってその反芻刺激は変動することが予想されますが、本用具は無投与との1日の反芻時間の違いから、おおよそ乾牧草換算1㎏程度の反芻刺激はありました。そうする乳量が30~40㎏の牛では粕多給方式(乾物当たりNDF45%程度)では乾牧草が5~6kgほど必要ですが、それがさらに1㎏程度減らせる可能性があります。
また従来どおりのTMR組成の場合は、穀類の選び食いや実際の反芻刺激が予想より低い場合、あるいは牛の健康状態により胃運動が低い場合の反芻刺激の「安全装置」の役割も出てきます。

食品工場が近くに多くある酪農家さんでは、上述のような粕類を多く手に入れ、「第一胃刺激用具」等を活用し、今の飼料高騰の対策になるのではと判断しています。

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。