私が飼料の研究開発に従事始めた1980年代には、ルーメン微生物から生成されるイソ吉草酸等のイソ酸の商材が繊維分解菌を増殖するということか、市販されていたり、またルーメン微生物のUGF(未知成長因子)と評される機能性商材が出ていました。今でも酵母等の菌の培養物が繊維分解菌等のルーメン微生物の増殖を促すということで市販されています。 しかし、これらは何れも市販製品であり、少なからず飼料費を上げるため、費用対効果を充分確認する必要があります。
これらのルーメン微生物に与える影響を大別すると、高泌乳牛において濃厚飼料を多給してもルーメンアシドーシスのリスクを少なくし、繊維分解菌等による繊維の消化を低下させないためと、もう一方は給与により繊維分解菌の増殖を高め、繊維の消化能力を高める場合の二つになります。
飼料としてあるいはその可能性ある食品副産物の中には、蛋白や炭水化物等という5大栄養素の範疇以外にルーメン微生物を特異的に増殖させたり、コントロールする機能性成分をもったものがあります。 食品工場から出る量が少なく、前述のような機能性成分があるにも関わらず、調らべられず、単に飼料、肥料、あるいは廃棄物として処理されているものが少なからずあります。例えば、食品原料を食品商材にするに当たり、製造過程で酸処理することがあります。そうするとその食品副産物のタンパク質は多くは遊離アミノ酸になっているのです。 遊離アミノ酸投与によるルーメン微生物の影響の研究報告はすでに出されていますが(下記参照) 、遊離アミノ酸であれば、100g単位でルーメン微生物の増殖効果を示す可能性があります。 また食品原料を発酵させて作られた食品商材の副産物の中には前述の酵母培養物と同様な効果を持ち、牛の食欲を促進させるものがあります。
しかし、乳牛を実際使って国内の発酵食品等の製造から出る副産物のルーメン微生物への影響を調査した研究報告は少ないのが現状です。ここに、ルーメン液を使って各種発酵副産物の人工培養試験を実施した興味深い研究報告があったので、下記に載せておきます。
以上食品副産物を単に5大栄養素以外にルーメン微生物に影響を与えるものが含んでいないか吟味すれば、飼料価値の高い食品副産物も出てくるのではないでしょうか。
(参考研究報告)
<https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2002/nilgs02-05.html>