飼料設計モデルの見逃されていること(3)「飼料設計、NDF45%のアシドーシスのリスクは?」

高泌乳牛の飼料設計の場合、一般に繊維成分であるNDF(全繊維と類似)は40%以下が多いと思います。

それでは、給与飼料中の乾物当たりNDF45%にしても、高泌乳の設計としてエネルギー不足が問題とならない場合はどういう場合でしょうか? 

同じ炭水化物であるコーン圧片の澱粉と同じくらい消化される繊維源の飼料を組み合わせることで可能です。                                                                                                              実際、コーン圧片の澱粉のような消化率が高い繊維源の飼料はありませんが、豆腐粕、リンゴ粕、大豆皮、ビートパルプ等は繊維の消化率は高いため、これらの飼料を組み込み、実際NDF45%とした給与試験における泌乳性は澱粉を高めた設計と遜色ない場合が多いのです。                                                                              一般にコーン圧片の澱粉は消化率は高いのですが、多給された場合、ルーメン、腸内のアシドーシスのリスクが高まり、計算上エネルギー価が高くでも実際はそうでない場合が出てきます。それに対して前述のような飼料の組み入れではアシドーシスのリスクが少なく消化率は高いままです。

ここで、疑問を持つ方がおられるかもしれません。高泌乳の飼料設計における乾物中の蛋白、脂肪、灰分を除くと炭水化物凡そ70~75%中の45%も繊維を占めると乳成分の中の無脂固形率が低くなるのではとの指摘です。                                                                                                                      しかし、実際の給与試験ではそうはなっていません。繊維はルーメンで消化されると乳成分の中の乳脂肪の原料となる酢酸になると教わった方が多いと思います。                                                                                                                                                                                                               ルーメン内で繊維が分解されると酢酸の他にプロピオン酸、酪酸等の酸が生成され、またこれらの酸がすべて乳脂肪の原料になるということではないのです。                                                                                      生乳中の乳脂肪や無脂固形の割合は、単純に給与飼料の澱粉と繊維のバランスだけで決まるわけではないのです。 

                                                    私が捉えるルーメン微生物のもつ飼料の消化能力とは、繊維の消化能力を意味し、この繊維の消化の限界はどこまでかを見極めるため、その牛群、牛の乾物摂取量を知り、また直腸検査や「糞洗い」を実施しています。

高泌乳の飼料設計において、NDFが45%になるのは、北海道のような自給飼料多給では想定されない設計です。豆腐粕やリンゴ粕等の食品副産物が安価に入る地域の酪農家が取り入れる飼料設計ではと捉えています。  

                                                                   尚、ブログの写真はNDF45%の飼料設計を可能にする、豆乳を製造する過程で出てくる生オカラを酵素・乳酸菌製剤を加えてサイレージ化している場面です。

(参考研究報告)                                           「食品製造副産物由来の高消化性繊維の多給および糖蜜給与が泌乳前期乳牛の生産性に及ぼす影響」(2014年 群馬県畜産試験場研究報告)

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。