飼料設計モデルの見逃されていること(2)「泌乳後半の摂取エネルギー源の違いと泌乳性」

今回は泌乳後半における摂取エネルギー源の違いによる体組織のエネルギーの蓄積(主に体脂肪)と産乳へのエネルギー分配について整理したいと思います。                               泌乳後半は一般にエネルギーバランスはプラスになり、所謂体脂肪の蓄積、太ってきます。この体蓄積を少しでも産乳に分配していく方法としては、成長ホルモンの注射があります。日本では認可されておらず、使うことはできません。

過去の研究報告(下記参照)として、泌乳後半のエネルギー摂取量を通常より減らした場合の結果が示されています。 結果は予想どおり、体脂肪の増加は少なくなるが、乳量の落ち込みも大きいというものでした。            この方法は太らせない処方箋としてはいいのですが、管理や経営的には難しい面もあります。            やはり、通常の飼料メニューで体蓄積を少なくし、乳量の減少も通常より少なくする方式を求めたいものです。                                               そこで考えられるのが、成長ホルモン注射のように、飼料給与で成長ホルモンの分泌を多くできないかということです。                                                                                                                                                        前報の研究報告(福井県畜産試験場)の結果では、エネルギー摂取量を同じにした中で蛋白レベルを単純に2%前後増減しても難しいようです。

そこで私の泌乳後半の飼料設計理論は、一般的には通常の泌乳後半の飼養標準モデルより大幅にとうもろこし圧片のようなバイパス澱粉を減らし、その分をDDGS等を組み込みバイパス蛋白に置き換えることです。この際、泌乳後半の飼養標準モデルより脂肪分を上げないようにします。この点はむずしい場合もありますが、泌乳後半のエネルギープラスの際の脂肪、特にパルミチン酸のような飽和脂肪酸は乳への移行が多いだけでなく、内臓脂肪等体脂肪の蓄積にも回るため避けたいところです。

この理論を支えるものは、一般に医学や家畜分野の研究報告に示される、血中アミノ酸(グルタミン酸等)の上昇が成長ホルモンの分泌を促すという知見に基づいています。 泌乳牛における厳密な給与試験等の実証研究を根拠したものではありません。自分の長年の多くの給与試験等の経験知から、泌乳後半の飼料設計において、通常より太りにくい設計として採用したい方式です。

尚、この飼料設計モデルは一般には飼料費が上がるため、低コストなバイパス蛋白を組み込む必要があります。                          

(参考資料)                                                     「乳牛の泌乳中・後期における、給与飼料低減によるボディコンディションスコアの調整」(畜草研研報(2011年))

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。