DDGSをTMR原料として使いこなすには?

DDGS(バイオエタノール製造副産物)はトウモロコシ中の澱粉をアルコールにして残った発酵残さ物です。栄養素的には澱粉はほとんどなく、濃厚飼料の中ではアシドーシスになりにくい飼料原料と言えます。本品は20年程前、米国より日本に飼料原料として紹介され、その後、私は乳牛、肉牛への給与試験等に携わり、飼料特性の確認をしてきました。その当時は価格も蛋白質含量、脂質含量から言って割安な原料と判断し、大豆粕やトウモロコシなどの蛋白/エネルギー飼料からの置き換えの調査、試験をしたわけです。

その際、泌乳牛のルーメン発酵に必要なRDP(ルーメン分解性蛋白質)や発酵性炭水化物が本品を組み込むほど低くなっていることを気に留めませんでした。

泌乳牛の飼料設計に携わっている方はこの給与試験結果がどうなったかは察することができると思います。

乳牛栄養の教科書どおり、乳脂率の低下や飼料効率が低下する結果となったわけです。一般的な濃厚飼料利用ではバランスとして、RDPや発酵性炭水化物が低くなる飼料設計にはなりにくいのですが、DDGSについては、前述したとおり、澱粉がわずか、蛋白もバイパス性が高いなど、これまでの濃厚飼料とは異なるバランスであったため起こってしまいました。

DDGSが日本に紹介されて約20年たった今、本品の飼料特性は国内でも大学や研究機関等で保存試験や給与試験等が実施され、明らかにされています。その中で見落とされているのが、本品は酵母が増殖した発酵産物であるということです。ここに焦点を当てた研究はほとんど行われていませんが、イーストカルチャ(酵母培養産物)のような効果も兼ね備えているのではと感じています。

本品は大学等で飼料品質に関しても調査されています。本品は吸湿性が高いことやまた米国の製造会社によって蛋白や脂肪等にばらつきがあることが知られています。本TMRセンターにおいてもそのような事情を踏まえ、定期的に本品の飼料分析を実施し、TMRの栄養価、品質の安定に努めています。

本品の泌乳牛の嗜好性はトウモロコシ、大麦圧片のような喰いつきがいい飼料ではありませんが、DDGS単品でも慣れれば牛が採食する飼料です。分離給与の農家さんにおいて、高泌乳のアシドーシスに悩んでおられる方は澱粉の高い濃厚飼料のトップドレス等である場合は本品に置き換えることで軽減できる可能性があります。 また本品はカルシウム含量が一般の乳配より低く、またカリウムも低いため乾乳用飼料としても適しています。

参考までにNRC飼養標準に記載されている飼料成分例を下記に示しておきます。

DMTDNCPC.FatC.AshADF NDFLigninADFIPNDFIPCaP
90.279.4829.710.05.219.738.84.35.08.60.220.83
MgKNaClSA分画B分画C分画B分解速度RUP消化率UIP/CP2DCAD
0.331.10.300.260.4428.563.38.23.6(%/hr)80726.4
1)2001年NRC標準(DM%)より 2)雪印種苗分析

次回は本TMRセンターにおいてTMR原料としている「糖蜜吸着飼料」について、なぜ乳牛用配合飼料より割高であるのに利用しているかを整理したいと思います。

(参考資料:「新たな飼料資源(とうもろこしDDGS)の成分分析等の結果」(平成22年3月 社団法人中央畜産会) http://kashikyo.lin.gr.jp/images/04_data/04/d04_02/001_DDGS_H21.pdf

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。