本TMRセンターにおける地元の利用農家さんは各自、自給コーンサイレージをTMRセンターに持ち込んでTMRに混合してもらっています。
TMRに組み込みにあたっては、これまでおのおの栽培したコーンサイレージの飼料分析を実施してきました。
コーンサイレージの乾物中の飼料成分は牧草サイレージに比較し、そのばらつきは大きくありません。しかし、実際に飼料分析せず、標準飼料成分表を利用するのは、精度の高い飼料設計とは言い難いところがあります。特に正確な水分の把握は重要です。コーンサイレージの水分は、牧草サイレージに比較し水分の変動は少ない傾向があります。それでも、水分65~75%程度のばらつきがあります。
例えば、1日1頭原物20㎏給与していても、水分65%と75%とでは、乾物量2㎏違ってきます。この違いはTMRの栄養バランスを変動させ、繊維不足のTMRになったり、あるいはエネルギー不足のTMRになる可能性があります。
実際、コーンサイレージや牧草サイレージの乾物量を把握してTMRに組み込むのではなく、水分が異なっても原物量を同じくしてTMRに組み込んで給与した結果、サイレージの水分が多い場合はNFC(非構造性炭水化物)過剰となりエンドトキシン(ルーメン微生物の内毒素)に異常値を示した研究報告もあります。下記に参考として示しておきます。
前述のように自給飼料の乾物率の変動は大きく、原物量でTMRを調整することはルーメン発酵を不安定にさせることになります。それを防ぐために、自給飼料のサイレージ水分が違うと感じたら、小まめに水分量を測定することを薦めます。低価な電子レンジ等を見つけて水分測定してはいかがでしょう。
コーンサイレージの水分含量は生育ステージとともに、茎葉割合と子実割合の比率によっても違ってきます。子実割合が高くなるほど、水分含量が低下していきます。コーンサイレージの場合、水分が高くても酪酸発酵するリスクは低いといえます。問題は水分が高いとサイレージの排汁ロスがあります(水分が高くなるほど排汁が多くなるが、乾物ロスとしては平均5~7%)。
エネルギー価では子実割合が多くなるほどTDN値は高くなります。しかし、経済的価値は流通乾草とメイズ(コーン)の市場価格を基準にすれば乾物当たりの茎葉は子実よりあると見なすことができ、茎葉タイプのコーンサイレージを組み込んだ方がTMRの飼料費は安くなる可能性があります(下記の参考資料参照)。
以上のように茎葉タイプと子実タイプのコーンサイレージでは飼料価値としてそれぞれ一長一短があります。そのため栽培する場合の大きなポイントは本ホームページに掲載されている「2019年度デントコーンサイレージ試験圃場の検証結果について」に示されているとおり、単位面積当たり乾物収量が高いかどうかが大事な点になります。
参考資料)
「牧草と園芸」第61号第2号「サイレージの品質変動が乳牛の健康状態と受胎に及ぼす影響」
「牧草と園芸」第47巻第7号「サイレージ用トウモロコシ子実タイプと茎葉タイプの経済性の比較」