農家さんの牛群管理よる利益改善の一つの方策として、<「乳代」-「飼料代」>を多くすることが挙げられます。これを実現する方法としては、私は以下のことに焦点を当てます。
1. 年間の泌乳前半(分娩後5.0ヶ月まで)の牛を多くするため、年間の経産牛の受胎頭数を増やす。
2. 周産期管理のレベルアップを図り、産後の疾病を少なくし、分娩後の「立ち上がり乳量」を増す。またその管 理向上により死廃牛頭数を減らす。
3. 乳房炎対策としては、その原因を整理し、的を得た対策を打つ。
4. 年間の乳生産計画を立て、その計画どおり進んでいるか、毎月、その進捗状況を確認し、未達の場合はその原因を整理し、今後の有効な対策を打つ。
これらのことを進めていくに当たり、一例として乳検「繁殖台帳Webシステム」を上記1~4に関して以下のように利用しています。
1.→毎月のAI回数や受胎頭数を個体毎にリアルタイムに把握し、繁殖の状況を的確につかみ、問題があれば改善策を講ずる。
2.→毎月2産以上の泌乳前半(分娩後1.0~5.0ヶ月)の1頭当たりの平均乳量、乳成分の推移を見て、給与している飼料のパワー、泌乳牛群の乾物摂取量、体調等を判断し、改善策を講ずる。
3.→下記のとおり、個体別に各月の体細胞数の推移が視覚的に把握できるため、例えば、バルク乳の体細胞数の増加の原因が牛群全体が高くなっている、特定の牛が再発している、あるいは新規に乳房炎の牛が増加している等、その内訳が把握でき、そのためそれに応じた体細胞数の対策を講ずることができる。
4.→農家さんの乳生産が計画どおりいかない理由は二つの要因に分けられる。<年間乳生 産量=年間の経産牛延べ頭数(365日分)×年間経産牛日平均乳量>であるため、乳生産が計画通りいかない要因としては、計画どおりの経産牛を確保できなかった、日平均乳量を確保できなかった、あるいは両方とも未達成、が想定される。
「繁殖台帳Webシステム」では、毎月、今後1年間の各月の乳生産量、経産牛(搾乳牛)頭数を予測している。そのため、年度当初の計画乳生産量を本予測を利用して決めることができる。また乳生産の減少の原因が経産牛頭数の減少か、平均乳量の減少等か判断ができ、それに応じた対策を打つことができる。年度当初計画に比較して乳生産量の差があったとしても、今後2~3ヶ月先の乳生産は最新の予測により把握できる。
以上、私が農家さんの乳生産や繁殖成績の改善の際の本「繁殖台帳Webシステム」の利用法の一端を示しました。乳生産も繁殖成績も数値で示されるものであり、これに影響する要因が数値で示されている本システムをぜひ皆さんも使いこなしていただきたいと思います。
個体毎の体細胞数(リニアスコア)(一例として)

(リニアスコア:体細胞数を対数変換した数値、4以上に上がっていくと体細胞数20万を超え、乳量の損出、潜在性乳房炎の可能性が出てくる)