私が過去研究開発に携わった中で注目した一つに「オスモライト」を含んだ飼料がありました。
「オスモライト」は日本語訳では「適合溶質」と訳され、細胞の浸透圧維持に機能するものです。一般に強肝作用がある天然物質の中においては、「オスモライト」が数多く含まれています。
その一例を挙げれば、ベタイン、イノシトール、グルタミン酸があります。さらに強肝作用と関係のある抗酸化作用のあるものを挙げれば、トレハロース、GABA(γアミノ酪酸)等が含まれてきます。
なぜ、「オスモライト」が抗酸化作用、酸化ストレスに関与するかを分子レベルで説明することは私にはできません。
ただ、微生物を含めて生物の細胞内代謝において、その浸透圧が維持できなくなることは細胞の死を意味することです。
このブログで度々話題にしている食品副産物ですが、エネルギーや蛋白含量等の栄養素の面からは飼料価値の評価は低くても、私は「オスモライト」を含む、あるいは発酵等による「オスモライト」が生成させる食品副産物に注目してしまいます。
「オスモライト」の作用のある物質の中で、ルーメンでの作用が比較的研究されているのが、「トレハロース」です。
トレハロースのルーメンにおける機能には下記に参考資料を載せておいたので、興味のある方は参照下さい。
また、ルーメン発酵を安定させる効果があると言われている酵母にも、乾物当たり7%程のトレハロースが含まれているのです。
一般に植物も細胞の維持に種々の「オスモライト」を生成します。その中で牛の飼料として注目しているのは、「きのこ」です。きのこには、この「オスモライト}であるトレハロースが乾物当たり10%以上 も含まれているのです。キノコの水分はその種類にもよりますが、90~95%と高水分ですが、収穫してからの日持ちは同じ高水分の作物よりはよいように感じます。これもオスモライトであるトレハロース含有量が多いためではないでしょうか。
きのこの残さ等、安価で手に入ることがあれば、一度、オスモライト含有という飼料価値の視点で飼料化を検討してはいかがでしょう。
(参考資料)
17K08040 研究成果報告書 (nii.ac.jp)
「乳牛における「オスモライト」の飼料価値」(「畜産の研究」:第71号第4号)