泌乳牛が50~100頭程度のフリーストール、フリーバーンでは、1~2群の管理であり、TMRも1~2種類です。
ロボット搾乳やトップドレス(濃厚飼料)を個体毎に給与できる方式では、その牛の栄養素の過不足は少なくすることは可能です。
ここでTMR1種のみ給与される泌乳牛の栄養素の過不足はどうなっているか整理し、その対応策を考えてみたいと思います。
仮にその牛群の平均乳量が30㎏として、乳量35㎏前後の牛のエネルギー、蛋白等の栄養素の充足が100%程度になったとします。それより乳量が低い場合は、多くの泌乳牛の栄養素は過剰になり、逆に高い乳量の牛は栄養充足率が低くなる場合が多くなります。
5大栄養素のうち、ビタミン、ミネラルは過剰に摂取しても泌乳牛の乳生産や受胎に負の影響はないでしょう。ただ不足する場合は問題になる可能性はあります。そのため40㎏以上の乳量でもビタミン、ミネラルは不足にならないTMR設計が必要になります。
それでは蛋白やエネルギーについてはどうでしょう。
一般に乳量が低い牛はエネルギー過剰になり太り、また蛋白もやはり過剰になり、体脂肪蓄積のエネルギー源になり、残余の窒素は尿素となり排出されます。
逆に乳量が35㎏以上の高い牛の多くは体脂肪や体蛋白を主にエネルギーとして使い痩せてきます。
この状態は受胎にはマイナスに働き、また肢蹄を弱める一因になります。
これまでもブログで説明してきたとおり、牛が痩せてくる場合、体脂肪だけでけではなく、筋肉等の体蛋白をエネルギーとして使います。
乳生産が40㎏、50㎏の牛において、このような状態を少しでも緩和する方法として、これまでも説明してきたバイパス蛋白を乳量40㎏以上の牛にも充足させる量にします。
ここで、乳量40㎏以上の牛にエネルギーがマイナスの中でバイパス蛋白を充足させた時の体蛋白の損出や乳生産、受胎への影響に関する詳細な研究報告が出ればと思う次第です。
泌乳牛のエネルギー源を飼養標準どおりにした場合、前述の本方式より澱粉含量は高くなり、アシドーシスや低泌乳牛の場合は高血糖によるインスリン抵抗性のリスクが高まる可能性がある一方、高泌乳牛の受胎には前述のバイパス蛋白過剰方式よりプラスに働く可能性はあります。また一般に本方式は飼料費は高くなるでしょう。
尚、八千穂TMRセンターにおける飼料設計はバイパス蛋白を重視した本方式を採用しています。