牛の代謝・栄養・飼料等のトピックス(26)「泌乳牛への暑熱期以外のマスタードシード給与による乳量アップ効果は?」

ルーメン内の微生物叢を変化させ、エネルギーロスになるメタン発生を抑制し、プロピオン酸を増やすことで、乳量増加につなげる商材は、国内でもいくつか紹介されています。

しかし、マスタードシードのようにウエットタイプのTMR等の飼料の2次発酵を抑え、しかもルーメン発酵を直接変化させ、乳生産アップに繋げる飼料は今のところ見当たらないようです。

すでに本品においては、特許取得がなされています1)。その給与事例は夏季に実施されており、冬季など2次発酵が起きにくい時期には実施されていません。

そのため、酪農家さんの協力を得て、下記の要領で給与試験(2重反転試験法)を実施した結果を冒頭の表に示しました。
結果は本品添加による乳量に有意な差はありませんでした。

しかし、乳脂率、SNF率の差(危険率P<0.25)から、ルーメン発酵に影響を与えている可能性(インビトロ試験等では、メタン発生の抑制、プロピオン酸増加が示されている)は捨てきれず、また給与頭数も少ないことから、暑熱時以外でも乳量増を期待し、試験的に試してみる価値はあるのではと個人的には判断しています。

(調査概要)
1)調査方法 :
牛舎の左右2列をA区(左列)およびB区(右列)とし、給与区を月ごとに反転させた。A区には10月および12月、B区には11月にマスタードシードを給与し、反対側の区を同月の無添加区とした。 給与量は1頭1日50 gとし、2回に分けてサイレージまたはPMR等へトップドレスした。給与開始後2日間は馴致期間として半量(1頭1日25 g)を給与した。

区分10月11月12月
A区(左列)添加無添加添加
B区(右列)無添加添加無添加

2)給与牛:
給与開始時点で育成牛、乾乳牛および分娩後2週間以内の牛を除いた泌乳牛を試験比較候補とした。さらに、3か月間の配合飼料給与量が一定で、各乳検日の前後に発情が認められなかった牛を試験解析対象とした。その結果、A区5頭、B区4頭の計9頭となった。

3) 給与期間および調査項目:
各月の乳検予定日の2週間前から乳検終了日まで給与した。10月、11月および12月の乳検成績から、個体別の乳量、乳脂肪率、無脂固形分率および体細胞数を集計した。

4) 本牧場の泌乳牛の飼料メニュー:
本牧場では、コーンサイレージ、粗飼料主体のPMR(発酵飼料、全酪連製造)、乳牛用配合飼料および自家配合飼料(ビタミン・ミネラル剤を含む)を給与していた。試験対象牛では、3か月間の各飼料の給与量を一定とした。

(参考資料)
1)公開特許公報(A)発明の名称「乳生産量改善剤」(P2017-2032A)

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。