発酵TMRで見逃されていること(4) 「発酵TMRの付加価値をお金で換算すると?」

ここでは、思考実験として、仮におよそ同じ原料構成のTMRを用い、発酵の有無(「発酵TMR」と「フレッシュTMR」)での泌乳牛への給与を想定し、発酵TMRの付加価値をお金で換算してみます。

1)発酵TMRがフレッシュTMRより余分に発生する費用は?
 ① TMRを密封する資材、包装装置、作業量(作業人員、作業時間等)
 ② 保管場所(1~4週間)

2)フレッシュTMRにはない発酵TMRの付加価値は?
① 水分の多い副産物を多く使用するTMRでは、給与後の2次発酵までの時間を長くすることができる(暑熱時でも多くの場 合、2次発酵を心配せずに給与できる →この面からの嗜好性、乾物摂取量、ルーメン発酵の安定が担保される)

② 一般の水分の多い副産物を多く使用するTMRセンターでは、多くの場合製造は毎日であり、そのための人員をその分確保しなければならない。発酵TMRでは、その必要はなくなり、休祭日等は稼働なしが可能になる。

③ 発酵する過程で出てくるアルコールやエステル等が乾草等に浸漬し、TMRの嗜好性を改善することが多く、採食量を安定させる一因になることが多い。またそのため選び食いも少なくする場合が多いのでは。

④ TMRを密封貯蔵することで、乳酸菌や酵母は増殖するため、それらの生菌剤等の資材を添加しなくても同じような効果が期待できる可能性があるのでは、但しその検証は試験的にも難しい面はある。

それでは、これらの付加価値をお金で換算するには、どうすればいいのでしょうか?
これまでの公的機関等の発酵TMRの研究結果の中では、このような試算が行われておらず、また前述に述べた付加価値の検証も詳しく調査されてはいません。
一方、TMRを発酵するための余分な費用につい ては、おおよその値ですが、目安として出すことは可能です。

前述の1)の①については、例えばTMRの㎏あたりの原料費コストとして算出できます。

1)の②の保管料は、貯蔵施設の減価償却費等からなんとか算出できるはずです。
それでは、フレッシュTMRの原料費に比較し、1)のコストアップがどのくらいであれば、発酵TMRを製造できる許容範囲になるでしょうか?

この「許容範囲」は種々の製造条件、利用者の乳生産等で異なり試算はむずかしいです。                 TMR乾物㎏あたり、5円以内(発酵TMR乾物20㎏給与では100円のコストアップ以内)に収まり、従来のフレッシュTMRより、農家さんの泌乳牛の乾物摂取量やTMRの消化率、飼料効率が上がり、乳量が1㎏以上上昇し、さらに前述の発酵TMRの付加価値を考慮すれば、そのコストを回収できる可能性は十分あると考えますが、いかがでしょう?

これはあくまで試算であり、現実には比較対照が少ない中での経営判断になります。

一方、フレッシュTMR製造の費用と比較できなくても、新たに発酵TMRを製造する費用は詳しく試算することは可能です。

通常の国内でのTMRセンターでの販売単価と比較し、経営努力の結果、発酵TMRの販売単価に競争力があり、前述の付加価値を高く評価する農家さんがいれば、普及が進むのではと密かに捉えています。

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。