2月に2019年度産デントコーン試験圃場の検証結果の報告会を行いました。
この検証は、本センター会員のデントコーンの作付面積の合計は約50haと小規模なため、如何に収量を効率よく得らるかを課題として調査を開始して本年度で4年目の取り組みとなります。
長野県の佐久農業改良普及センターと連携を行い、調査には普及センターの立ち合いのもとで検証を行っています。同時に試験圃場へ「おんどとり」を設置して、気象状況を把握し有効積算温度を計測して収穫適期等を求めています。
試験圃場は酪農家が播種する中心地域に置き、酪農家が実際行うペースで施肥、播種、除草剤散布、刈り取りを行い、収量調査を実施するというもので、より実態に即した調査圃場として設置するようにしています。そのため、その年々で調査結果へも影響を及ぼすことになります。
取り組み初年度は、現地で実際播種されている種子の検証から始め、翌年からボーダー(基準)となる品種を選出し、新たな品種をボーダー品種と比較して検証、選抜する取り組みとしています。4年目となった本年度は主にボーダー品種と新品種との差を確認しました。
品種については、主に流通している種苗会社取り扱いの品種とし、雪印種苗、カネコ種苗、国営種、パイオニアエコサイエンスを主として10-12品種を比較しています。
収量調査結果は毎年種子の受注時期(2~3月)に、普及センターの担当者から収量、病気の発生、倒伏の発生等の調査データの公表会を実施していただきその年の品種を決定します。今年の選抜品種については、RM110~115の品種を選抜しました。

今までの収量調査から感じた点でお知らせしておきたいことが一つあります。
ご存じと思いますがデントコーンは牛に食べさせる飼料です。もちろん良質な発酵したコーンサイレージを作るのは前提条件となりますが、飼料に重要なのは「乾物収量」です。飼料設計を行うときにも乾物で給与計算を行い1頭当たりの価格を計算します。当たり前ですが、単位面積当たりで現物よりも乾物重量が高いものが飼料価値が高いものとなります。
できあがった見た目は良いけど乾物で調査すると思ったほど重量はない品種が数多くあります。特に中、晩生品種は見た目が大きく、さぞ収量が高いものと勘違いしがちですが、乾物収量で計測したら早生品種よりも低い品種が多数あります。これは「子実」の大きさによるものだと言えます。
茎葉の乾物重量は生重量と比較して4割程度しかありませんが、子実は実に6割もあります。そのため、子実の乾物重量が乾物収量に大きく影響しているといっても過言ではありません。また、水分含量についても子実の水分量が40%前後に対して、茎葉の水分量は実に80%もあります。つまり、背丈が高い品種は総じて茎葉が多くなるので、全体の水分含量が高くなります。反面、ガサが小さくても子実の大きい品種はその分水分が少ないため全体の水分は低くなります。
サイレージ調整する場合には、黄熟後期の水分含量が低下した70%程度が良いといわれていますので、ガサはなくとも子実の大きい品種のほうが調整し易くなります。
早生品種と中生、晩生品種の子実を比較してみてください。早生品種のほうが子実は大きい傾向があります。だから、いくら大きくて見栄えの良い中生、晩生品種でも乾物重量に換算すると早生品種に負けてしまうことが多々あります。デントコーンのガサや見栄えで比較するよりも、中身で比較することが重要です。
見栄えの良い品種は収穫作業も大変だと思います。丈が小さい、ガサが少なそうな早生品種でも子実の乾物収量が高い品種ならサイレージの水分調整も楽だし、作業機を痛めることも軽減され、収穫時の労働も軽減されます。
もちろん、病気の発生や倒伏によって収量の差も発生しますので一概に乾物率の高い品種や子実の大きい品種が良いとは言えませんが、そのために当センターでも毎年試験を行って、同一圃場内で品種間差を調査しています。
昨今では新品種が目まぐるしく競って発売されるため(たぶん前品種からより良い改良された品種となっていると思います。)、比較試験の必要性は高まっています。今後も継続的に調査も行っていきたいと思います。
今後、このブログから随時新商品等についての比較、調査情報を発信していきたいと思います。皆様のご参考になれば幸いです。
最後に捕捉しますが、その土地の気候や作業体系によっても合う品種、合いにくい品種があります。これを調査するには自分で見て判断することが一番だと思います。皆様方も是非自分で試験を行って、肌で感じてみてください。