どんな代用乳、人工乳を選びますか?

各飼料メーカーから栄養成分や原料、添加物が異なった代用乳が出ています。酪農家さんが生まれた子牛を代用乳を使って育てる場合、家畜市場等へのホル雄、F1の肉牛用「スモール出荷」と自家産のホル雌後継牛ではその給与方法等、飼育方式が異なっていることが多くあります。
通常の肉牛用スモール出荷では、代用乳をメーカー基準より多く与え、発育をよくしているようです。 また人工乳も与えていない農家さんも多くいます。それに対して、ホル後継子牛では概ねメーカーの基準通り与えていることが多く、人工乳も併用しています。

一般に代用乳を基準より多く飲ませた場合、前回指摘したとおり、生乳に比較し、脂肪含量が高い代用乳ほど不消化性の下痢や脂肪分の多い糞性状になるリスクが高まります。
代用乳の栄養成分は大きく、脂肪、蛋白、糖(主に乳糖)、灰分に分けられます。脂肪含量を下げた場合、蛋白か乳糖が上がることになります。乳糖含量が上がった場合には腸内の浸透圧が高くなり、下痢等のリスクが大きくなり、自ずと蛋白を上げることになるわけです。
そのため現状では、粗蛋白質26~27%、脂肪含量20%以下の製品の使用が市場出荷子牛に多給できる代用乳となります。

次に自家産ホル後継子牛への代用乳について、整理したいと思います。 将来乳用牛として乾物摂取量の高い、高乳生産の牛が求められるため、「肋張り」のいい育成牛に育てていく必要があります。そのため、代用乳に求められるものは、メーカーの基準量(推奨量)でエネルギー充足(免疫力/抗病性)に問題なく、しかも人工乳の食い込みが順調である代用乳ということになります。それでは、このねらいに合う代用乳の栄養成分(脂肪、蛋白、糖(主に乳糖))としてはどのようなバランスがいいのでしょうか。

前述の代用乳の多給方式とは異なり、代用乳の給与量が1日凡そ700g以下の中で、脂肪含量は脂肪酸組成、乳化に問題なければ25%程度でも脂肪性の不消化のリスクは少なくなります。この方式の中で人工乳の摂取量が多くなる代用乳が推奨されます。 農家さんがこの方式による性能の高い代用乳を見出すには、やはり哺乳期間中、人工乳を不断給餌、自由飲水させ、子牛の体重測定をし、代用乳の性能を比較する必要があります。

ここで哺乳期における人工乳の栄養的位置づけを整理したいと思います。 人工乳の研究開発に携わったことがある者としては、子牛の消化管の発達から見て、2種類を使うことを薦めます。2種類使うと手間はかかりますが、発育が高まり、飼料効率はよくなります。                                   
その一例を挙げてみますと、離乳直後の1㎏程度採食するまでは、そうこう類等と異なる繊維含量の低い大豆粕、コーン圧片等の乾物消化率が高い嗜好性のいい原料主体の人工乳を不断給餌します。その後は子牛の繊維の消化性も徐々に高まるので、ルーメンの発達を促すため、ビートパルプやヘイキューブの入ったスタータを不断給餌します。大腸アシドーシスや下痢等のリスクは前述の穀類主体の人工乳に比較し少なくなります。                                                                     

哺乳期初期での人工乳の摂取が高い場合、そのまま哺育期、離乳後まで続いて育成期の発育に影響していきます。食いつきのスタートダッシュがよい人工乳が求められます。そのため、哺育初期から子牛が好む嗜好性の高い、消化性のよい人工乳を与える必要があります。   
この人工乳の食いつきのスタートダッシュを高める器具として、写真にある「バーデンスタート」というニップル付きのボトルに人工乳を入れて給与します。これを使うと一般のバケツ給与に比較し、人工乳の採食量が多くなり、ルーメン等の消化器の発達が早くなります。

この記事を書いた人

Ishida

いろんなことに「なぜ」、「なぜ」と問いかける性分が子供の頃からあり、今も続いています。牛は私に「正直」に接してきますが、人は必ずしもそうではないため苦手です。このブログを通して、牛が農家さんに貢献してくれるとともに、牛が健康に長く生きられる術を皆さんといっしょに考えていきたいと思います。